オール・ザ・キングスメン


 2008.11.29  田舎者ドリーム 【オール・ザ・キングスメン】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
権力を手にした田舎者が、その力を維持するため、当初の志を忘れ汚職に手を染める。なんだか先が読める展開ではあるのだが、ポイントである元新聞記者のジャックがなぜこれほどウィリーに肩入れするのか、それだけが終始疑問だった。初期のウィリーは確かに魅力溢れる男だったが、後半のウィリーにジャックが心酔するほどのカリスマ性があるとは思えなかった。権力闘争の中で絡みつく人間関係の妙は面白い。ある程度予想できる範囲だが、意外な展開もある。ジャックの内に秘めた魅力は画面から溢れているが、ウィリーに仕える理由というのが最後まではっきりとしなかった。最後までドキドキしながら見ることはできるが、中盤に中だるみのようなものがあったのが残念だった。

■ストーリー

実直で社会革命の理想に燃える役人のウィリーは、州知事選に立候補し、自分の貧しい生い立ちを語り、労働者や農民の立場に立った演説を続け見事、州知事となる。ところが絶大な権力を手に入れた彼は、忌み嫌っていたはずの汚職に手を染め、次々とスキャンダルにまみれてゆく…。

■感想
ウィリーをめぐって様々な人々が絡み合う。清冽なはずのウィリーも権力に毒され、汚職に手を染める。ある程度わかりきった流れであり、そのウィリーの強烈な渦の中にいつの間にか巻き込まれてしまったジャックやジャックの幼馴染であるアンやアダム。そして、ジャックにただならぬ影響を与えたアーウィン判事。全てを巻き込んだ渦の中心にいるはずのウィリーよりも、その周りで、巻き込まれながらもなんとか自分の信念を貫こうともがくジャックの姿が一番印象に残っている。ジャックがウィリーについたばかりに、全てのことにずれが生じている。

最初は志の高い、反権威主義者と思われていたジャックも。田舎者から知事にまで登りつめたウィリーを昔から見ている立場上、ただならぬ思いが強かったのだろうか。最初の志はいつの間にか消え去り、自分の親代わりでもあるアーウィン判事にまで反抗しようとする。このジャックの、本人も気づかない少しづつのズレが本作のポイントなのだろう。いつの間にか、自分が汚職の手助けをし、後には引けない状態となる。全ての歯車が少しづつずれ、最後には全てがぶっ壊れてしまう。だれも幸せにはなっていない。

強烈な個性を示していたウィリーも。後半になると元気がなくなってしまう。後半はお坊ちゃまであるジャックの一人舞台だ。一人でかき回し一人で苦悩する。政治的駆け引きや、裏取引の面白さも多少はあるが、メインはジャックの人間関係がぼろぼろに崩れていく様を見るということなのだろう。アンやアダムやジャック。上流階級のお坊ちゃまたちには、俗世間の中で仕事をするには耐え切れなかったのだろうか。最初は力強い印象のあったジャックも、後半はただの操り人形にしか見えなかった。

ショーン・ペンのインパクトよりも、ジュード・ロウの内面的な変化に目を奪われてしまった。



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