アキハバラ@DEEP 石田衣良


2009.12.3  オタクたちの独立戦争 【アキハバラ@DEEP】

                     
■ヒトコト感想
オタクたちが協力して会社を興し、巨大なネット企業に立ち向かう話。オタクたちは一癖も二癖もあり、それぞれが秀でた能力を持っている。その能力を生かしビジネスを成功させ、画期的な検索エンジンを発明する。虐げられたオタクたちが登りつめるサクセスストーリー的だが、まぁ良くあるパターンかもしれない。しかし、敵対するネット企業がとんでもなく悪く、陰険でむかつくので、自然とアキハバラ@DEEPの面々を応援したくなってくる。終盤の襲撃計画はワクワクドキドキするのだが、結局格闘技に頼るあたりが、ほんの少し残念だった。オタクたちが特殊能力を活かし、敵と戦う。定番的流れなのだろうが、それはそれで安心して読むことができる。

■ストーリー

社会からドロップアウトした5人のおたく青年と、コスプレ喫茶のアイドル。彼らが裏秋葉原で出会ったとき、インターネットに革命を起こすeビジネスが生まれた。そしてネットの覇権を握ろうとする悪の帝王に、おたくの誇りをかけた戦いを挑む!

■感想
コスプレ喫茶のアイドルオタクたち。それぞれが、文章能力に優れていたり、音楽やデザイン、プログラミングなど、秀でた能力を持っている。そんな、一人では秋葉原しか安心できる場所がないようなオタクたちが、協力し会社を興し革命的な検索エンジンを開発する。そこにいたるまで、オタクたちの個々の能力が活かされているとはあまり思わなかったが、ネットベンチャー企業らしい成功の道筋をたどっているような気がした。注目を浴び始めると、その力をかすめ取ろうとする巨大なネット企業が敵として登場する。

この悪の帝王というべきネット企業がとんでもなく悪い。自分の思うとおりにならなければ、強硬手段にうつる。そのやり口があまりにも汚いので、いつのまにかオタクたちと同じように、激しい怒りを覚えてしまった。圧倒的な力の前に屈するのか、それとも相手に懐柔されるのか。最後に壮大なカタルシスが得られるであろう展開に流れていく。この流れはもはや定番というか、巨大な象に立ち向かう蟻の気持ちになり、応援してしまった。襲撃計画がどうにも現実感がなく、突拍子がないように感じられるが、敵の憎たらしさがすべてを打ち消している。

オタクたちが襲撃し、自分たちの検索エンジンを取り戻そうとする。お決まりどおりネットを駆使した情報戦や、セキュリティを破るための方策。電子的な戦いになるかと思いきや、意外にも物理的で原始的な戦いとなっている。まさか、オタクが格闘技を駆使し、警備員を倒すことになるとは思わなかった。このあたりから、なんだか都合が良すぎる流れになってきた。オタクというよりもITの知識が豊富な者たちの戦いのように思えた。オタクの範疇が随分と限定的なことも気になった部分かもしれない。

秋葉原を舞台にしたオタクたちの独立戦争とでも言うべきだろうか。




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