アホは神の望み 


2009.8.26  アホのススメ 【アホは神の望み】

                     
■ヒトコト感想
アホのススメ。効率化を求める現代において、スローな生き方をススメている本作。アホといっても、意味のあるアホだ。鈍感と言い換えることができるかもしれない。しかし、それはとてつもなく才能があったからこそ、アホでよかったのか、アホだからとてつもない能力が示せたのか。アホの例として登場させているのが、ノーベル賞受賞者たちなので、比較対象としては正しくない。天才だからアホであった可能性もある。一般人がそのままアホになると、ノーベル賞がとれるわけではない。アホのススメというのは「そんなに効率化に目くじらをたてることはない」を言い換えただけにすぎない。充実した生活をおくるための、作者なりの指針というところだろうか。

■ストーリー

今の世の中、みな「少しでも早く」「少しでも賢く」「少しでも無駄なく」「少しでも損をしないように」と目先のことばかり気にしているのではないでしょうか? しかし、ほんとうは眼前のことにあまりとらわれず、アホ、ボンクラ、デクノボーといわれるぐらいに生きているほうが充実した幸福な人生をおくれるのかもしれません。遺伝子工学の第一人者である筑波大学名誉教授の村上和雄氏が、自分の研究成果である遺伝子ONの話、有名な科学者の逸話、大きな悲劇から立ち直りつつある方々の話などからさまざまな例をあげ、ほんとうに豊かで幸せな「神の望むアホな生き方」とはどんなもので、どのようにたどりつけばいいのかを語ります。

■感想
作者は研究者として大成した人だ。その人が「自分はアホだ」と語るとき、読者はどう感じるのか。まっさきに思ったのは、周りと相対的にそう思っただけで、実際はそうでもない。周りというのは優秀な研究者ばかりで、学生時代は秀才と言われた人たちばかりだろう。そんな人たちの頭の回転の速さと比べて、自分はアホだと言っているのなら、ほとんど参考にはならない。一般人がアホという言葉から感じるのは、本当のアホで、本作の言うアホとは違う。ひとつのことをコツコツと地道な努力をし、他人のスピードを気にせずやり通すことができる人をアホと言っている。

アホライフにあこがれるかというと、実はそうでもない。現実世界では、ノーベル賞をとるようなアホよりも、頭の回転が速く、なんでも効率的にこなせる人の方が重宝がられるからだ。アホで成功する人もいるかもしれないが、それはほんの一部だ。これは本作を否定しているわけではなく、意味を取り違えたら危険だと思ったからだ。アホになるといっても、意味のあるアホにならなければならない。他人と比較して、自分の頭の回転が遅くても気に病むことはない。そんなふうに読み取れた。

アホのススメ以外にも、遺伝子工学の話がいくつもでてくる。それはとても参考になることであり、現在の最新技術のさわりだけでも知ることができるのは価値があるのだろう。人の皮膚から簡単に人の臓器を精製できるなど、まさに夢の技術のように思えた。もし、この技術が実用化されたら、人は死ななくなってしまうのではないだろうか。遺伝子の研究者として、致死遺伝子についても言及している。それらはとても興味深いことだった。

アホのススメに従って、明日からアホになる。なんてことは一般人では絶対にできない。



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