R.P.G 宮部みゆき


2009.8.25  擬似家族という違和感 【R.P.G】

                     
■ヒトコト感想
ネット上で発生した「擬似家族」をメインに、ある殺人事件を解決へ導くというミステリー。終始、取調室の中での出来事と会話で物語を構成している。そのため、ひどく箱庭的で、小ぢんまりとした印象が強い。事件の被害者がネット上で擬似家族を演じていた。擬似家族たちと事件はどんな関係が…、という流れだが、いまいちはまり込めなかった。まず擬似家族というのがどうしても頭の中にイメージできなかった。例えチャットや掲示板でそのような関係を築いていたとしても、現実にそれに沿った年齢だとは限らない。この奇妙な関係をすんなり受け入れることができなかったので、ミステリーとしても味気なく感じてしまった。

■ストーリー

住宅地で起きた殺人事件。殺された男性はインターネットの掲示板上で「疑似家族」を作っていた。殺人に関わりが? 虚実が交錯し、見えてきたものは…

■感想
連続殺人事件の容疑者を絞り込む過程で、擬似家族が大きな役割を果たすことになる。まず一番最初に違和感をもったのは、擬似家族なんてことが成立するのかということだ。好き好んでやる人がいるとは思えないが、本作ではそれがメインとなっている。さらには、オフ会で擬似家族の正体が明らかになるのだが、実際に家族を演じていた者たちが、演じた役割に近い年齢と性別だということにも違和感をもった。ネットの世界では匿名性が命だ。どこの誰だかわからないから、擬似家族なんていうはずかしいこともできると思ったのだが…。このあたりが想像を超えていた。

事件の犯人は簡単に想像することができる。そこに至るまでに大きな変化やどんでん返しはない。どのようにして犯人を自供させるか、犯人だと確信を得ることができるか、それをメインとしている。そのため、複雑なトリックや、不思議だという感覚はない。奇妙な擬似家族という現象を言いたいがために本作を書いたとしか思えない作品だ。擬似家族と本物の家族が出合ったらどう思うか、それも本作で言いたかったことの一つなのだろう。まぁ、当然気分が良いものではないのは確かだ。

発生した連続殺人事件がそれほど複雑ではなく、当たり前に起きそうなことだったので、そのあたりが引きの弱さの原因なのだろう。どうやって?誰が?どんな理由で?というミステリー小説の醍醐味をほとんど味わうことができなかった。人の思いと人との繋がりが、どのように変化していくのか。家族の関わりが薄くなりつつある現代社会に警笛を鳴らす意味があったのだろうか。なんだか、盛り上がりポイントがないまま終わってしまったような感じだ。

「擬似家族」以外は特別な要素はない。



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