Laundry [ランドリー]


 2009.6.11  純粋な心に癒される? 【Laundry [ランドリー]】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
純粋で子供のような心を持つテル。心に大きな傷を持つ女、水絵。どこかつかみどころがないが、善人と思われるサリー。この三人がメインとなる本作。ゆっくりと流れる時間の中で、テルののんびりとした生活を眺めることからスタートする本作。テルの生活とほんの些細なきっかけから知り合いになった水絵の生活。どこか人間的に欠陥があるような人々が、テルに癒されているのだろうか。物語はまるで環境ビデオでも見るかのようにゆっくりと、そしてテルの純粋さばかりを際立たせようとする。サリーをきっかけとしてハトを飛ばす仕事を始めるテル。何をやってもテルの純粋さは穢れることがない。テルのようになりたくてもなれない現代人が、テルの生活にあこがれながら見る作品なのだろうか。うらやましくもあり、つまらなくもある生活だ。

■ストーリー

祖母の経営するコイン・ランドリーで、洗濯物が盗まれないようにいつも監視していたテル(窪塚洋介)は、ある日乾燥機の中にワンピースを置き忘れたまま田舎に帰ってしまった女性・水絵(小雪)を追いかけていく。やがてふたりは、ひょんなことから知り合った中年男サリー(内藤剛志)の下でハトを飛ばす仕事に従事するようになるが…。

■感想
純粋なテルの周りには悪い人間はいない。水絵であっても、サリーであっても根本は善人だ。性善説を裏付けるように、テルは善意に助けられ生活することができている。テルの純粋さが他人を引き付けるのかもしれない。心に深い傷をおった水絵がテルによりそい、安心感を得る。そこには、どこか上から目線の部分もあったかもしれないが、次第にテルの生活に同化しているような気がした。水絵のことをテルがどの程度受け入れていたかわからないが、最初はあまりよく思っていなかったのは確かだろう。テルの心境の変化もわかる部分がいくつかあった。

テルと水絵の間にサリーという中年男が入ったことで、二人の生活に光が差したような気がした。ハトを飛ばす仕事というのがどれほど大変な仕事かわからないが、本作では良い部分しか見せていない。日々生活することであっても、金を稼ぐということであっても、物事の良い部分だけを見せている。そして、テルのような人間でものんびりと楽しく生活ができると思わせている。実際のリアルな部分を隠し、虚構として観衆に夢を与えている。夢も希望もない現実をつきつけたところでまったく意味はないが、作品の趣旨として、最後までこのトーンでいったのが気になった。

人の心を優しくさせるきっかけというのは何なのだろうか。テルのような人と触れ合うこと?夢を探して旅立つこと?親に寄生すること?日々あくせく働いている現代人にとって、この何でもうまくいってしまう純粋で綺麗なテルという青年に対してどんなイメージを持つのだろうか。うらやましくなり、ドロップアウトしたくなるのか?それとも、虚構は虚構として自分を見直すきっかけにするのか。あまりに都合の良すぎる展開に、なんだかこのゆっくりした流れ全てがうそ臭く感じてしまった。最後まで現実を見せなかったせいなのだろうか。

テルの純粋な笑顔を見てどう思うか、それにかかっている。



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