K-19


 2010.4.6  高濃度放射能の恐怖 【K-19】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
潜水艦ものにハズレはないというジンクスどおり、やはり本作もすばらしい作品だった。ただ、潜水艦ものというよりも原発事故ものと言ってもいいのかもしれない。密閉された潜水艦の中での緊迫感あふれる場面の数々。原爆が爆発しかねない緊張感と、放射能漏れの恐怖。そして極めつけは原発を修理するために、高濃度放射能に汚染された区域に入らなければならないということだ。この場面は誰もが衝撃を受けるだろう。高濃度の放射能を浴びると人間はどうなってしまうのか。三組に分かれた作業員たちの中、最初の作業員が10分間という限定された作業を終え戻ってきたときの衝撃はそうとうなものがある。ソ連の最新技術を集めて作られた潜水艦をまかされ、さらには船員たちの命も預かる艦長の苦悩が手に取るようにわかる作品だ。

■ストーリー

厳格な軍人・アレクセイが艦長を務めるソ連軍潜水艦・K-19は処女航海へ。ミサイル発射テストやNATO基地偵察などの任務を遂行していくが、ある日、艦の原子炉に異常が発生し…。

■感想
実話をもとにした作品ということは、それだけで大きな衝撃を与えることができる。本作のようにショッキングな場面が多ければ多いほど、そうなってくるだろう。ただ、多少の脚色やハリウッドらしくヒーロー崇拝主義が気になるのだが、作品全体を通してすばらしい出来栄えだ。特に、飽きることなく次々とおとずれる様々な事件や事故。艦長であるアレクセイの前に乗員に信頼された生え抜きの艦長がおり、それが副艦長として乗り込んでいるというのも、本作のポイントかもしれない。寡黙で厳格で多くを語らないアレクセイ。はっきりいえば、中盤までは良い艦長なのか悪い艦長なのかまったくわからなかった。

米ソの冷戦時代において、原子力潜水艦というのは大きな役割をもっているのだろう。ソ連の原潜としてミサイル発射実験に成功し、その任務を達成したかにみえた。このあたりは厳格な艦長に不満がありながらも、結果がでたことに、ちょっとした気の緩みというか、達成感というのがあらわれていた。そこから一転、原発の冷却水が漏れ、いずれ大爆発を起こすとわかったとき、船員たちはどのような行動をとるのか。高濃度の放射能が充満する中での作業をした結果どうなるのかわからない第一陣は勇気がいるだろう。その第一陣の結果を見たあとは…。このあたりは一番ショッキングな場面だろう。

原発事故を修復するために、自分の命をなげうって修理に励む船員たち。アメリカらしいヒーロー崇拝主義だが、物語の舞台はソ連の原潜内であり、さらには志願した者たちには、何かしら祖国に残したものがある。定番だが、祖国に帰ったら結婚するというやつだ。高濃度の放射能というものが人間の体にどういった影響を及ぼすのか。未知の部分であり、映像として見せられると衝撃を受けずにはいられない。ただ、そういった犠牲の結果とアレクセイ艦長の決断、さらには副艦長の忠誠心が第三次世界大戦を防いだといっても過言ではないだろう。

こういった事件が冷戦時代に起きていたというのは、結構な衝撃かもしれない。



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