ゾンビーノ


2008.2.24 ポップな音楽と軽快な色使い 【ゾンビーノ】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
ゾンビ映画は数あれど、似たようなことをやりながら、こうも雰囲気が異なるのはやはり音楽の力が大きいのだろう。ゾンビの大群が人に噛み付き、次々とゾンビを生み出していく。本来ならばとても恐ろしく緊迫した場面のはずだが、ポップな音楽と軽快な色づかいでずべてをコメディ化している。ゾンビを人間が操るという時点ですでになんだか面白いのだが、間抜けなゾンビや間抜けな飼い主たちによってさらに面白おかしくなっている。シリアスな場面であってもあっさりと流してしまうこの雰囲気。六十年代風ともいえる映像美とあいまって、かなり特殊な作品となっている。結末ではほんの少しだけ、しんみりとした雰囲気も味わうことができる。

■ストーリー

かつて宇宙からの放射線の影響で死体がゾンビとなり人々を襲う事態が発生。しかしゾムコム社が開発したゾンビを従順にする首輪によって、地球に平和が戻った。それから数年後の小さな街ウィラード。ティミーの家でもペットとして最近流行のゾンビを飼うことに。いじめっ子から助けられたのをきっかけにゾンビと仲良くなったティミーは、ゾンビに「ファイド」と名を付ける。しかしファイドが近所のお婆さんを食べてしまい……。

■感想
ゾンビに噛まれ、そしてゾンビになる。この映像だけみると完全なホラーだ。ゾンビを操る首輪が故障すると、とたんに凶暴なゾンビとなり、人を襲い始める。非常に緊迫した流れの中にいるはずなのだが、登場人物たちはゾンビに対してはことさら気にしないようなそぶりを見せる。ゾンビを飼いならすという設定も突飛であれば、そのゾンビと心の交流を描くあたり、定番とはいえなんだかほんの少しだけ感動してしまった。皆から虐げられる存在であるゾンビ。ティミーとファイドの心の交流は、たとえファイドがおばあさんを食べたとしても、色あせることはない。なんだかおかしな話だ。

ポップな音楽と、綺麗な色使い、そして六十年代風の映像。ゾンビが溢れ、それを警官が必死に銃撃するシーンであっても、軽快な音楽と合わさると、どこかシュールな場面に見えてくる。ゾンビの存在自体もそうだが、特に人間の命というのは一切気にしていない。これがコメディ化している最も大きな原因なのだが、人が殺されるということに重要性はない。そこがへんに面白く、また本来ならば緊張感をもってみる場面のはずなのに、そうならないのは笑いを誘う要因ともなる。

ゾンビが人間と交流をもつことで、首輪がとれてからも気持ちが通じ合うことになる。この流れは大昔の映画だが、シザーハンズを思い出してしまった。異質で危険なものとの心の交流と、それを排除しようとする周りの大人たち。ハードルが高ければ高いほど、感動も大きくなる。ゾンビの無表情な中にも、かすかに感情が読み取れるシーンなど、ちょっとジーンときてしまった。ただ、基本はコメディなので、ゾンビの行動一つ一つは笑えてくるのは間違いない。

今までにないパターンだが、ゾンビを使ったコメディということになると、どうしても人の生き死にはどうでもよくなる。そして、最後にはゾンビが優秀なペットに思えてくるから不思議だ。



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