夢・出逢い・魔性 森博嗣


2005.12.3 夢で逢いましょう、かー 【夢・出逢い・魔性】

                     
■ヒトコト感想
タイトルの夢・出逢い・魔性というのは「夢で逢いましょう」とかけているのだろうか??
内容もそれなりにリンクしているようだが・・・・。
複雑なトリックもなく、どちらかというと個性的なキャラクターがバタバタと動き回り楽しませてくれ、
いつもの三人がクイズ番組に出演したりとかなり今までとは違った趣である。
今回新たに登場した保呂草のパートナー的役割をした稲沢さだがこのキャラクターに関して一番驚いた。
最後にある記述でそれに気がついたのだが、またしても作者にしてやられたのか、
それとも単純に僕が読み逃していたのかどちらかだが、本編のトリックよりも印象に残っている。

■ストーリー
20年前に死んだ恋人の夢に怯えていたN放送プロデューサが殺害された。
犯行時響いた炸裂音は1つ、だが遺体には2つの弾痕。
番組出演のためテレビ局にいた小鳥遊練無(たかなしねりな)は、
事件の核心に位置するアイドルの少女と行方不明に……。

■感想
本作のトリックは特に取り立てて興味を引かれるようなものではない、
事件に関しても普通に警察が捜査していればいずれ犯人にはたどりつくレベルの普通の事件かもしれない。
保呂草や紅子が関わったために少し早く解決でき、被害者が減ったというだけの話だろう。

新たな登場人物である稲沢の寡黙でありながらキレル人物という設定も気になるところだ。
どちらかというとこのシリーズでは紅子が寡黙なのだが、小鳥遊や紫子がおしゃべりで騒がしい感じなので
雰囲気の違ったタイプがでてくるとバラエティーに富んで物語に厚みがでているような気がする。
保呂草との寡黙ながらも微妙な掛け合いも面白い。

小鳥遊、紫子、紅子がクイズ番組に出場するのだが、
明らかに無理がありながらも強引な展開に持っていけるのも
作者の力であり、このキャラクターたちだからこそ許されるというのもあるだろう。

作中に犯人の動機というものが少しだけ語られているのだが、ちょっとそれは現実感にかける思いがした。
確かに特異な人物なのでということならば納得はできるのだが、
それが殺人にまで発展するのはどうなのだろうか?
最終的にいろいろと動機らしきものを作中の人物たちが想像しているのだが、
結局最終的な動機というのは明らかになっていない。

本作では事件のトリックよりも稲沢という新たなキャラクターに関して最初からある先入観を持っていた。
作中にはそれを明確にするような記述はなかったのだが、
最後の最後にその先入観をひっくり返される言葉を紅子が発する。
これは周知の事実だったのだろうか?それとも作者のいたずらなのだろうか。
もしかして自分が読み飛ばしていただけならば、とても恥ずかしい。



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