陽気なギャングが地球を回す 伊坂幸太郎


2006.6.1 言葉のキャッチボールが抜群 【陽気なギャングが地球を回す】

                     
■ヒトコト感想
さまざまな特殊能力を持った者達が銀行強盗を企てる。それぞれが非常にキャラ立ちしておりそのキャラクター達が思う存分暴れているような感じだ。この作者の独特な文章とキャラクター達の言葉の中に含まれるユーモアや比喩がとてもセンスがあり、言葉のキャッチボール一つ一つに気を使っているような印象を受けた。ストーリーはサラリと流れるが、相当考え込まれてさまざまな部分で隠れた工夫がされているようだ。

■ストーリー

嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、精確な体内時計を持つ女。この四人の天才たちは百発百中の銀行強盗だった……はずが、思わぬ誤算が。せっかくの「売上」を、逃走中に、あろうことか同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯に横取りされたのだ! 奪還に動くや、仲間の息子に不穏な影が迫り、そして死体も出現。

■感想
ミステリー的には、まあわりと良くあるパターンかもしれない。ただキャラクターが強烈なのとある程度ご都合主義というのを除けば普通のミステリーだろう。しかしこの作品で興味を引かれる部分は、登場人物達の会話がいちいち面白いというか、為になるというか、心に残るような会話を繰り広げている。何も気にしなければ、さらっと流される部分ではあるが、よく考えると非常に練りこまれている会話シーンが沢山あるような気がした。

銀行強盗という普通ならば決して成功しないものを、いとも簡単に成功させてしまう。その根拠がちょっと弱く、いくら天才的な能力を持ったからといって、そう簡単に何度も銀行強盗が成功するとはとうてい思えないので、その部分だけなんだか違和感を感じてしまった。

この手のキャラクター主導型の作品であれば、どのようにしてこのキャラクター達が出会ったかが一番重要になってくると思う。本作では主要キャラクター達の出会いに関してはある程度のエピソードはあるのだが、それに必然性を感じることができなかった。一緒に銀行強盗をするほどの強い絆がどのようにして生まれたのか、それは想像するしかないのだろう。

おそらくこのキャラクター達を使えば、さまざまな作品に登場させることができるだろう。もしかしたら一人のキャラに焦点を絞った外伝的なものも出てくるかもしれない。それがでてくれば当然読むつもりだ。




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