ウィスキー


2005.11.28 工場の機械音が印象的 【ウィスキー】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
日本での「ハイ、チーズ」がウルグアイでの「ウィスキー」らしい。よくよく考えると日本のチーズはおかしい。
最後の口の形が笑った形になるわけでもないのにそのまま使っている、不思議だ。
本作のウィスキーはただ一度写真を撮るときに出てくるだけで物語りには一切関係ない。
淡々と流れる印象が強く、工場の機械の音や何気ない生活音を効果音として使用しているためだろうか
とても寂しい感じがした。とりたてて、山あり谷ありな物語ではなく、
人によっては退屈でつまらないと感じてしまうかもしれない。
ゆっくりと動く時間の中でのちょっとした出来事がそこに住む人々にとっては
とても大きな出来事になるという作品だ。

■ストーリー
ウルグアイの町、父親から譲り受けた小さな靴下工場を細々と経営するハコボ 。
毎朝決まった時間に工場へ行き、シャッターを開ける。
その工場で働く控えめでまじめな中年女性マルタ。長年仕事をしていても、
必要以上の会話を交わすことのなかった二人。
そこに1年前に亡くなったハコボの母親の墓石建立式のため、
ブラジルで同じく靴下工場を営む彼の弟・エルマンが来ることになる。
ハコボは弟が滞在する間、マルタに夫婦のふりをしてほしいと頼む。
意外にもその申し出をすんなり受け入れるマルタ。
そして偽装夫婦の準備をはじめる二人。結婚指輪をはめ、一緒に写真を撮りに行く。
カメラの前に立ち、二人はぎこちなく笑う。「ウィスキー」。そしてエルマンがウルグアイにやって来た。
ハコボ、マルタ、エルマン、嘘でつながった彼らはどんな物語を繰り広げていくのか・・・。

■感想
ハコボ、マルタ、エルマン。みな青春時代をとうに終えてしまった引退間近の中年と言ってもよい年だろう。
最初は中年カップルのちょっとしたラブロマンスかと思ったが、結局はそうなるわけでもなく
本当にただ淡々と物語が進んでいくだけだ。
そんな平坦な物語の中にも少しづつ山らしいところはあるのだが、それがきっかけで生活が
劇的に変化するというわけでもなくなんでもない日常には変わりがない。

ゆっくりと流れる時間の中でもちょっとした些細なことが、そこに住んでいる人々にとってはある種の
黒船のような役割をはたし、その後の生活に何かしら影響を与えるのだろう。
本作もエルマンがブラジルからやってきたことで今までの平凡な生活に
ちょっとした影響を与え兼ねないのだがそこでも結局はハコボもマルタも今までと変わらず、
恐らくその後も変わらない生活を過ごしたことだろう。

夫婦のフリをしたからといって安易に熟年カップルが誕生しなかったのも良い。
エルマンが帰った後にハコボとマルタがくっついたりしたら、
途端にありきたりなつまらない物語になってしまっていた。
ゆっくりと流れる時間の中で、外圧?がかかって始めて変化するというのはよくあることだが
あえて何も変わらず、淡々と普段通りの生活に戻るという、超マイペースなハコボとマルタ。

しかし、僕が見た印象ではハコボはエルマンをうっとおしがり、マルタは変化を望んでいるようにも思えた。
マルタが変化を望む心に自分自身が気づいていながら何もできない。
結局はいつもの平凡な暮らしに戻ってしまう人間の弱さではないが、生き方というのを感じた。



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