Vフォー ヴェンデッタ


2006.9.25 正体不明感が良い 【Vフォー ヴェンデッタ】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
謎の正体不明な仮面の男。その仮面が不気味で何か得体の知れないものを感じてしまう。独裁政治であったりテロであったりと、様々な時代の印象的な部分を抜き出して、いいとこ取りをしたようなストーリーなのだが、謎の仮面の男の正体が最後まではっきりと明かされないのはいい面もあるが悪い面もある。なぜ男は次々と計画を成功させることができたのか、一人では到底できないようなこともやってしまう。謎めいてはいるが、説明放棄ともとれる。しかしサスペンスな部分と勧善懲悪的な部分が入り混じり、一人で圧倒的な強さで戦う姿を見るとすっきりとした爽快感を感じることができる。ちょっと漫画的ではあるがそれもまた面白い。

■ストーリー

TV局で働くイヴィー(ナタリー・ポートマン)は外出禁止時間帯の夜に秘密警察に見つかり、絶体絶命の危機に見舞われたところを、"V"とだけ名乗る仮面の男(ヒューゴ・ウィービング)に命を救われる。しかし、"V"と名乗るその男は、国家を相手にひとりテロ活動を続け、クラシック音楽の調べにあわせて街を爆破、TV局を不法占拠し、政府要人を暗殺していく、正体不明、経歴不詳、善か悪かの判別不能の男だった、、1605年に国王の圧制に反発し国家転覆を図り失敗に終わったガイ・フォークスにならって、イギリスの反逆精神の象徴となったその日、11月5日-ガイ・フォークス・デイ-に、国民の決起を呼びかける"V"。

■感想
銃を持った相手に対しても、あくまでナイフと格闘で対応する。それが仮面を被りマントをまとった謎の人物であれば、なおさらその胡散臭さは倍増するだろう。いったいこいつは何なのだろうか?それが本作で興味を引かれる部分であり、最後まで気になる部分であった。その回答は本作では、はっきりとはせずその素顔さえもはっきりと確認することはできない。最後まで何か謎を持った人物として処理されている。

一人っきりのテロといえるのだろうか。国家に対して対抗しつつ、それを追い続ける刑事にもフォーカスが当てられている。Vの戦い方や雰囲気が中世ヨーロッパ風なので、これが現代の出来事だと忘れがちになってしまう。それを引き戻すのがVを追いかける刑事たちである。この刑事も良い味をだしており、Vを追い詰められないということで有能ではないのだが無能でもない。苦虫を噛み潰したような表情に深みを感じ、Vとの対決というイメージはないのだが、良いカンフル剤にはなっている。

テロのシーンで登場するクラシックの音楽に合わせた爆発。衝撃的なことのはずなのに
とてもスタイリッシュで何かちょっとしたショーを見ている気分にさせられる。全体を通して、一人でひっそりとテロを計画するような泥臭さは一切なく、テロがどのような計画で、どうゆう手順で行われるかをまったく表に出さない。代わりにイヴィーが狂言回し役となり、Vを恐れながらも気にしつつ、気の毒なほどVのおもちゃにされている。イヴィーがいることでVに人間味が増しておりイヴィーがいなければ、ただの謎のテロ首謀者で終わってしまう。

Vの正体をはっきり明かさなかったのは成功であり、失敗のような気がした。どの終わり方が正解かわからないが、本作の謎を含ませた終り方もいいのかもしれない。



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