ベニスの商人


2006.2.16 なぜか哀れみを感じた 【ベニスの商人】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
シェイクスピアの喜劇を映画化しているのだが、喜劇自体を知らない人が何の事前知識もなく本作を見ると単純なユダヤ人批判と取れなくもない。強烈なまでに嫌な人物シャイロック。シャイロックが悪ければ悪いほど肉をとられるアントーニオに同情する気持ちが強くなる。それをうまく利用して最後はすっきりさせようとしているのだが・・・、結末を見ると、全てを奪われたシャイロックのなんとも言えないへこんだ顔に哀れみを感じてしまった。アル・パチーノの演技がすばらしすぎる。

■ストーリー

16世紀のベニス。ゲットーに隔離されたユダヤ人であるショイロック(アル・パチーノ)は金貸し業を営み、キリスト教徒から蔑まれて暮らしていた。ある日、若きバッサーニオは、美しい遺産相続人のポーシャに求婚するため、親友のアントーニオに借金を頼む。全財産を船で輸送中のアントーニオは、ユダヤ人金貸しのシャイロックを紹介するが、シャイロックは、無利子で金を貸す代わりに、3ヶ月以内に返済できなければアントーニオの肉を1ポンドもらう、と申し出る…。

■感想
喜劇用の題材がシリアスに描かれている。そうなると多少矛盾が生じる場面がある。金を返せなければ肉を1ポンドとられる。それは心臓を取り出し死を意味することらしい。もうそこまで来ると物語の流れは読めてくる。すると想像通りの展開となり、慌てふためくアントーニオ。キッチリと型にはまったつくりなので、違和感はないのだが先が読めてしまう展開だ。

結末間近にはポーシャがある人物に変装するのだが、そこは喜劇ならば問題ないことでもシリアス調の本作には、そこだけやけに浮いているような気がしてならなかった。変装したポーシャと相対するパッサーニオもまったく気づかない。見ているものにとっては丸わかりなのだが、本作はシリアスなので暗黙の了解なのだろう。

全ての人に忌み嫌われるような人物に仕立て上げられているシャイロック。これをアル・パチーノが演じることによって本当に嫌味な人物になったかと思うと。弱弱しく、哀れみを誘うような老人になったりと、ここまで同じ人物の印象が変わるものかと驚いた。特に最後の裁判の場面では、自分の主張をふりかざし、裁判官にたてつく姿と、判決が出て自分の今後の境遇を知ったときのあの悲しげな表情は信じられないほどの激しい変化だ。

喜劇用の作品をシリアス調にしているために、多少違和感があるが十分楽しめる作品だ。



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