嘘をもうひとつだけ 東野圭吾


2005.4.16 心に残るうそ 【嘘をもうひとつだけ】

                     
■ヒトコト感想
誰のための嘘なのだろうか。
誰かのタメにつく嘘はとても心に残る。
本作の中の犯人達は必ずしも自分のタメに嘘をついているわけではない、
誰のタメの嘘か分かったときには、とても辛い気持ちになった。

■ストーリー
誰もが平気で嘘をつくわけではない。
正直に生きていきたいと望んでいたのに、
落とし穴にはまりこみ思わぬ過ちを犯してしまった人間たち。
そしてそれを隠すため、さらに秘密を抱え込む……。

■感想
本作は5つの短編からなっている。
主人公は加賀刑事であり、何事も見逃さない緻密な推理で犯人を追いつめていく。
他の作品で活躍しているであろう加賀刑事を僕は本作で始めて知ったので
最初は違和感があったが、最初の短編が終わる頃にはそのキャラクターと
性格がだいたい把握できた。

主人公が加賀刑事のそれぞれの犯人を追いつめていく過程が
とても緻密だと思った。
しかし短編それぞれの主役は犯人達だろう。

全ての短編に言えることだが、物語は悲しい結末になっている。
自分のタメに嘘をつくのではなく、誰かのタメにつく嘘。
その気持ちはとてもよく分かるので、やるせない気持ちになる。
加賀刑事もそのことを分かっていながらも犯人を追いつめていく
悲しさのような物が滲み出ているような気がした。

全ての物語が悲しい結末で終わっているが、それが救いようのない
悲しさだというとそうではなく、考えようによっては
未来に希望がもてるような終わり方をしているものもいくつかは
あったように感じた。

それぞれの短編が短いので、時間がないような人には最適かも。




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