2005.10.3 大学時代を思い出した 【冷たい密室と博士たち】
評価:3
■ヒトコト感想
大学の研究室を舞台に起こる密室殺人。その研究室の雰囲気は自分が大学時代に所属していた研究室と
かなり酷似しているのでちょっとした既視感を覚えてしまった。
密室の状態が難解な実験においての密室状態なので、一般人にとっては実験室というだけで
なにか特別な物がありそうな印象を受けてしまうだろう。
研究室に所属する沢山の人物がでてくるが、それぞれ一人一人のキャラクター付けがなされていないので
物語の奥深さというものはあまり感じなかった。
■ストーリー
同僚の喜多助教授の誘いで、N大学工学部の低温度実験室を尋ねた犀川助教授と、
西之園萌絵の師弟の前でまたも、不可思議な殺人事件が起こった。
衆人環視の実験室の中で、男女2名の院生が死体となって発見されたのだ。
完全密室のなかに、殺人者はどうやって侵入し、また、どうやって脱出したのか?
しかも、殺された2人も密室の中には入る事ができなかったはずなのに?
研究者たちの純粋論理が導きでした真実は何を意味するのか。
■感想
研究室の雰囲気とUNIXを使ったネットワークコンピュータを使用するなどものすごく懐かしく感じた。
自分の大学時代を頭に思い描きながら、本作を読み進めていったのだが、
その過程でどうしても研究室のメンバーそれぞれに対するキャラクター付けがあまりされていないような
印象を受けたので、次々と起こる事件の中で自分なりに予想を立てることができなかった。
唯一特別扱いされていた喜多助教授のみ印象に残り、それ以外特に最初の頃は
取っつきにくいキャラクターとして扱われていた八川でさえ、
途中でほとんど印象がなくなってしまった。
それはおそらく主人公二人のキャラクターが強烈なのもあるが、
事件を推理しているメンバー自体が、研究室の他のメンバーについて
あまり興味を持っていなかったからだろう。
オーソドックスな密室殺人なのだろうが、その密室が実験室という一種特別な部屋なので
それだけでも何かありそうな雰囲気をただよわせている。
冷たい密室というのが本作のトリックに大いに関わっていることで、
これが冷たくなければ成立していなかったのだろう。
今回は回想も含め、犀川、萌絵、喜多という三人がそれぞれの推理を展開し、
その過程で事件を振り返る回想が入ったりとちょっとダラダラとした印象を受けた。
最終的な動機はまあ納得できるのだが、それまで完璧な犯人がなぜか
UNIXに自分が進入した痕跡を残したりとちょっとコンピュータに詳しい人だと、
その辺は一番気にする箇所なのにあえてずさんにしているのは疑問に思った。
理系な小説の名にふさわしく、ネットワークコンピュータに対する進入を見破られてから、
雪崩式に犯人が判明してしまう。やはり最後はコンピュータ絡みになってくる。
これが受け入れられない人もいるかもしれない。
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