トワイライト 重松清


2006.10.1 不幸せな家族たち 【トワイライト】

                     
■ヒトコト感想
これから先、本作のような世代(40代)になる人達が読んだらどう思うのだろうか。本作に登場するように家族との生活には、もしかしたら夢も希望も持っていないのかもしれない。登場する家族の全てが全て不幸といっても過言ではない。これが現実だといわれてしまえば何も言えないが一般的には幸せな結婚をして家族を持ち、子供も普通に育てあげる家庭の方が多いのではないか。社会的な風潮のせいかもしれないがリストラやDVが当たり前のように語られている。確かに多いのかもしれないが、決してそれは一般的ではない。本作に登場するような家族も決して一般的ではないはずだ。そう思いたい。

■ストーリー

小学校の卒業記念に埋めたタイムカプセルを開封するために、26年ぶりに母校で再会した同級生たち。夢と希望に満ちていたあのころ、未来が未来として輝いていたあの時代―しかし、大人になった彼らにとって、夢はしょせん夢に終わり、厳しい現実が立ちはだかる。人生の黄昏に生きる彼らの幸せへの問いかけとは。

■感想
最初に言いたいのはメインの登場人物達はみな40代間近なので、同世代かそれ以上でなければなかなか感情移入するのは難しいかもしれない。僕自身も読んでいて、違和感を感じ、親の世代ではないのだが、親の気持ちというよりは、どちらかといえば子供の気持ちで読んでしまった。本作を読む最適な年齢というのが何歳かわからないが、子供が読むには厳しすぎ、20代、30代ではまだ実感がわかない。そうなるとどうしても30代後半から40代になってしまうのか。

相変わらずこの作者の作品はどこか不幸に満ち溢れている。その中にかすかな希望のようなものがある終わり方ではあるが、全編を通して全ての登場人物が何かしらの不幸を背負っている。読んでいて沈んだ気持ちになると共に、自分はまだ幸せなんだという気持ちになれる。自分より下がいればまだ救われるという江戸時代の階級制度のようなものを狙っているのか?恐らく狙ってはいないが、その効果もあると思う。

学生時代に注目を浴びていた人物が歳を取ると途端に貧相に見えてしまう。これは良くあることだろう。子供の頃の上下関係というのは根拠のないもので、それが大人になった時にまでつうようするのもどうかと思う。自分がいったいどの立場なのかとふと考えたりしたが、家族を持っている人ならば余計そんな感情も生まれてくるのかもしれない。

現実をいやというほど見せ付けられたと感じる人もいれば、他人事のようにただ創作だと割り切って読める人もいる。それは恐らく今自分がいる立ち位置にも大きく関係しているのだろう。




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