トパーズ 


 2008.6.3  ガチガチのハードなSM 【トパーズ】  

                     

評価:3

■ヒトコト感想
風俗関係に携わる女性たちを主人公とした短編集。それもただの風俗嬢ではなく、ガチガチのSM嬢だ。一般人には想像もできない世界だが、それがさも当たり前の日常のように描く作者。どこか日本ではない別世界の話のように感じる展開。物語に登場するSM嬢たちは幸せなわけではない、かと言って不幸というわけではない。一般人では理解できない世界を描き、作者の得意分野と思われるSMをクローズアップしている。未知なる世界を描くというのは、何でもできる自由があるのかもしれない。ただ、読者にどれほど理解してもらえるか、それは未知数だ。

■ストーリー

風俗嬢…。高層ホテルの窓ガラスに裸の胸を押しつけ、トパーズの指輪を見つめ、大理石のロビーを彼女たちは行く。そして、都市の光景を、サディズムとマゾヒズムの接点を行き交いながら感じる。この瞬間にも東京と混じり、そして疾走する女たちを村上龍はとらえた。

■感想
本作に登場するSM嬢たちは、決して綺麗ではなく、どちらかというとブスの部類に入る女ばかりが主人公となっている。それにどういった意味が含まれるのか。作者の傾向としては、ハードなSMを受け入れるSM嬢と、それを要求するセレブな男。本作に登場する世界の中には貧乏人はほとんど登場しない。皆、金銭的には満たされており、余裕があるのでSM嬢を買う。ベースとして、バブル全盛の日本を彷彿とさせるような下地があるために、どうもそのあたりに違和感を感じてしまった。

全編、ほぼすべてSMが登場する。それもソフトなやつではなく、かなりハードなものだ。一般人は簡単には受け入れることができない世界の話なのは確かだが、怖いもの見たさというのはある。未知の世界の話をしっかりと描かれていても、興味本位でしっかりと見てしまう。金を貰ってSMをする。もちろん需要があるから供給があるのだろう。本作では供給側の話がメインなのだが、とりわけ、そのSM嬢自身の環境の話がメインとなっている。

内容を知らずに読んだので、最初は衝撃を受けた。しかし、作者の作品の傾向として、その手の話は今まで何度も出てきていたのでそれほど拒絶感はなかった。ただ、全てがすべてSM関係の話に終始するとは思わなかった。ある程度覚悟をしていれば、それなりに許容できるのだろう。

このタイプの作品は正直、まったく感情移入や共感はできない。本当に未知の世界の話をノンフィクションを含めて描いているのだろう。



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