となり町戦争


2008.1.24 これ以上の理不尽な戦争はない 【となり町戦争】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
てっきり、となり町どうしで、些細ないざこざが戦争へ発展するというコメディタッチの作品かと思っていたが、まったく違っていた。少しのユーモアと、飽きさせない演出。ごく普通の日常に突如として食い込んでくる「戦争」という事実。まさに現代の日本のように、戦争とは無縁と思われる国に戦争というものを理解させるのに一番適している作品だろう。ある日突然、隣人と殺し合いをすることになる。なんのために戦争をやっているのか誰も理解していない。ただ、そこには戦争という事実のみが存在する。となり町との戦争というありえない展開だが、戦争の理不尽さを十分に表現していると思う。これは意外に良作だ。

■ストーリー

戦争という「業務」で繋がれた“僕”と“香西さん”次第に現れる戦争の本当の姿と、リアルに芽生える恋のゆくえ・・・「舞坂町はとなり町・森見町と戦争を始めます。開戦日5月7日。」ある日届いた、となり町との戦争のお知らせ。偵察業務に就かされた“僕”は、業務遂行のために、対森見町戦争推進室の“香西さん”と夫婦生活を始める。戦時にもかかわらず、町は平穏を崩さない。かろうじて戦争状態と分かるのは、日々のニュースで発表される戦死者の数だけ。だが、戦争は淡々とした日常生活を静かに侵食していき、“僕”は、知らず知らずのうちに、その戦争の中心にいたのだ…。

■感想
正直、最初はただのコメディという思いで見ていた。役所で「戦争」という業務を行い。事務的に戦争に加担することになる”僕”。ただ、本人にはまったくその自覚がなく、永遠に続くと思われる日常も何一つ変わらず過ぎ去っていく。あれよあれよというまに、スパイになり、偽装結婚までさせられる。末端の町民にとっては戦争がどれほど重要なのか、そして、どれほど無関心なものなのか、それらを国と国とで表現するのではなく、より身近なとなり町であらわしたことに本作の素晴らしさがある。

会社の上司がある日突然、戦争相手の雇われ傭兵として自分に向かってくる。戦争が終われば、また元通り普通の生活に戻る。表面的には何も変わらない日常であっても、その裏では戦争の犠牲者となる人々がいる。自分の手を汚していないだけで、十分戦争に加担しているという言葉は、まさに今の日本にそのままぴったりと当てはまる言葉なのだろう。誰が好き好んで戦争をやっているのか、誰もやりたくはないが、いつの間にか戦争が始まっている。そして、始まれば、なかなか止めることができない。戦争を忘れかけた日本に何かを思い出させる作品だ。

となり町との戦争というありえない設定や、偽装結婚、そして職場の仲間たちのキャラクター。ただ、戦争の空しさだけを語る作品であれば、こうも集中して見ることができなかった。適度なユーモアと、とぼけたキャラクターなど、くそまじめで終わらない部分が非常によかった。結末間近までは、非常に優れており、かなり真剣に見ることができたが、前半にくらべると、後半のグダグダ感はいただけない。特に終戦後の余計な恋愛部分は必要あるのか微妙だ。

テーマといい、内容といい、あまりメジャーではないが、かなりよい作品だと思う。ありきたりな作品に飽きた人にはうってつけの作品だ。



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