2007.1.10 息苦しくなる閉塞感 【トゥモロー・ワールド】
評価:3
■ヒトコト感想
明日の世界がこんな世界ならば夢も希望もない。作品中にあふれる閉塞感。テロや略奪、暴動など息苦しくなるような世界に子供が生めなくなった人類。こんな最悪の世界が未来ならばお先真っ暗だ。最悪の状態まで落とし、最後には人類の希望である一人の少女を送り届けて壮大なカタルシスがあるかと思ったが何もない。あっさりと終わってしまう結末。夢も希望もないのはもちろんのこと、辛く苦しい思いのみしか残らない。それが狙いなのかもしれないが、たとえ奇跡的に人類の希望となる少女がいたとしても、明るい未来をそこに見出すことはできなかった。終始暗い雰囲気のまま終わる作品だ。
■ストーリー
西暦2027年。ロンドンには移民が溢れ、当局は移民たちを厳しく取り締まっていた。街にはテロが横行し、全てが殺伐としていた。18年間、人類には子どもが誕生しておらず、人々は未来のない世界を生きていた。ある日、エネルギー省官僚のセオは、元妻・ジュリアンが率いる地下組織FISHに拉致される。彼らはセオを利用し、人類救済組織“ヒューマン・プロジェクト”に、人類の未来を担う一人の少女を届けようとしていたのだ……。
■感想
子供を生むことができなくなった人類。この世界の閉塞感の秘密はそこなのだろうか。それともテロや暴動が蔓延する世界のせいなのだろうか。登場人物たちの表情には未来に希望を求めるような明るいまなざしの者が一人もいない。ただ本能に任せて生きているだけといような感じか。テロに恐怖する世界というのもリアルに現代の未来の形を想像させるようで息苦しくなった。全世界がそうではないが、現実に本作のような雰囲気の国は存在しているだろう。これが世界の未来の形だと思うと夢も希望もなくなってしまう。
主人公のセオやその仲間たちであっても、表情に活力というものを感じない。希望がなくなった人間というのはこうなるのだと思い知らされるような人々。ハリウッド的なご都合主義もなければ胸のすくような奇蹟も起きない。ただ現実をリアルに表現しているように淡々と進む物語。リアルなだけに恐ろしさと息苦しさを感じた。極めつけは戦場カメラマンのように画面がセオのあとをついて走り回る。その際に目の前の人間が撃たれ、その血しぶきで画面が汚れる場面では、これはドキュメンタリーかと感じたほどだ。
18年間子供が生まれない世界に突如として登場した赤ん坊。その子供に対してだけ戦場の銃撃もぴたりと止む。人類の希望として一筋の光がそこには見えたようにも思えたが、根本的には何も変っていない。未来への希望がヒューマン・プロジェクトだとしたら最後の場面でのカタルシスが足りない。今までの閉塞感から脱却するにはもっと盛大な夢と希望をもたせなければ到底つりあわない。
最後に登場する一艘の船。その先に明るい未来がまっているようには到底思えない。暗い気持ちのときに観るとさらに気持ちが暗くなるだろう。
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