東京原発


2007.10.29 強烈なアジテーション 【東京原発】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
作中でもあるように原発の危険性をアジテーションするために、本作は作られたのだろうか。もし、そうだとするとあまり話題になっていないので、失敗したということだ。世間に対して原発の危険性をアピールすることには失敗しているが、作品としては十分面白く、見るに値する作品だと思う。特に前半に登場する原発に対する議論は、とても興味深くある種の原発トリビアのようなものとなっている。この事実を原発が誘致されている新潟や福島の人が見ると、怒り狂うかもしれない。それほど衝撃的な内容となっている。

■ストーリー

東京に原子力発電所を誘致しようとする都知事の意向に沿い、大量のプルトニウムを載せたトラックが東京に向かう。しかし、その途中で爆弾マニアの若者にトラックを乗っ取られてしまい…。

■感想
前半部分の議論は、恐らく現在の東京都庁である石原都知事を意識したつくりになっているのだろう。あまりに独善的で、すべてが自分の思いどおりにならなければ気がすまないようなキャラクターとなっている。強引に東京に原発を誘致しようとする展開は、原発の危険性を考える良いきっかけになるのだろう。まさに、作中の都知事の思い通りに物事は進んでいる。

前半部分が秀逸な原発トリビアとしたら、後半部分は突如として映画的なありえない展開となっている。いきなり偶然原発テロが発生したり、爆弾で東京を死の灰まみれにさせようとしたり。現実的な前半と比べて、あまりに現実離れした後半は突然本作が映画という虚構だということを思い知らされるように急激に冷めてしまった。前半部分はNHKで放送してもいいほど、データに基づいた説得力のある説明だっただけに、その落差には驚いた。

東京に原発を誘致するという発想自体まずありえないのだが、何が具体的にダメなのか、そして、なぜ
東京ではダメで福井や新潟ではいいのか。人間の尊厳に関わるような、そして人間の身勝手さも垣間見せながら物語りは進んでいく。マスコミに流された情報をすべて鵜呑みにし、原発がなくてはならないものと思い込んでいる現代にとっては、まさに冷や水をかけられたように、スッキリと目が覚めてしまう。

本作を電力会社が見たら、間違いなく抗議の対象になることだろう。しかし、そうやって話題にすれば、本作の内容が話題となり、結果的に原発に対する目が厳しくなることを理解して、何もクレームがないような気がする。



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