2006.2.12 如何にして部屋に入らせないか 【扉は閉ざされたまま】
評価:3
■ヒトコト感想
ミステリーの謎解きが内輪での話となってしまっているので緊迫感はそれほど感じないのだが主人公である伏見が2手3手先を読みながら行動するところや、優佳との内に秘めた心理戦など読み応えたっぷりな作品だ。ただ、綿密な計画のもと実行したというのはわかるのだが、そこにいたるまでの動機が弱く、また密室に関してもさほど重要視されていない。しかし本作は密室や動機など今までのミステリーでは重きをおいていたところよりも、如何にして扉を開けさせないかという心理戦を重視している作品だ。
■ストーリー
久しぶりに開かれる大学の同窓会。成城(せいじょう)の高級ペンションに七人の旧友が集まった。〈あそこなら完璧な密室をつくることができる〉当日、伏見亮輔(ふしみりょうすけ)は客室で事故を装って後輩の新山を殺害、外部からは入室できないよう現場を閉ざした。何かの事故か?
部屋の外で安否を気遣う友人たち。自殺説さえ浮上し、犯行は計画通り成功したかにみえた。しかし、参加者のひとり碓氷優佳(うすいゆか)だけは疑問を抱く。緻密な偽装工作の齟齬(そご)をひとつひとつ解いていく優佳。開かない扉を前に、ふたりの息詰まる頭脳戦が始まった……。
■感想
同窓会に参加するメンバーが個性豊かでそれを利用して自分のシナリオどおりに進めて行こうとする伏見。普通に考えるといくら事前に下見をしていたとしても、ここまで完璧に計画を実行することはできないだろう。あまりに偶然に頼りすぎているような気がしたが、それさえも作者からしたら必然なのだろう。
僕にとっては不可解だった動機も、読む人によっては納得いくものなのかもしれない。それと共にちょっと理解に苦しんだのが伏見と優佳の関係だ。お互いが引かれあっているのに自分達がまったく別の種類の人間だということに気づいて別れたと・・・。その別の種類の人間という説明がイマイチ納得できるものではなかった。かなり抽象的な説明であったせいかもしれない。
密室のトリックを暴くというのではなく、如何にして密室に入らせないかということを目的として環境を利用し、巧みな話術で数々の危機を乗り越えるあたりはドキドキして面白いのだが、それは所詮言葉のマジックで、読みようによってはただへ理屈を並べているように感じなくもない。
密室ミステリーにあきあきしている人にはもってこいの作品かもしれない。
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