ザ・プロジェクト 成功の軌跡 


2006.11.12 表面的には共感できる 【ザ・プロジェクト 成功の軌跡】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
巨大なシステム開発の成功事例。そこに行き着くまでの紆余曲折が描かれている。非常に表面的な部分であり、対外的に問題ない部分だけ発表されたものがそのまま、まとめられているだけだ。同じ業界にいるものとしては、本質的な問題やもっとドロドロとした部分があるはずなのに、それらは一切描かれていない。絶対に表に出せない部分など沢山あるはずだ。巨大プロジェクトの事例としては参考になるが、成功させるために何かヒントがあるかというと、特に何もない。ただ、その雰囲気を感じることはできる。

■ストーリー

企業の命運を賭けて、莫大な資金を投じる企業情報システムの構築プロジェクト。もちろん失敗は許されない。しかし、その完遂までの道のりはけっして平坦ではない。誤解、軋轢、裏切り、経営環境の変化、ハプニングなど、当初は考えもしなかったような、さまざまな障壁が待ち受ける。

■感想
巨大プロジェクト完遂までの険しい道のりを具体的な事例と共に、企業名をそのまま出して描かれている。ノンフィクションであるがゆえに真の答えは描かれていない。その企業にとって都合の悪い部分は隠されている。それはしょうがないことだが、本作に描かれている部分だけを真に受けてしまうと、とんでもないことになる可能性がある。本作はあくまでこんなことがありましたよ、的な見方で見るほうが良い。

同じ業界の人間が見て、共感できる部分もあれば、ちょっとおかしな部分もある。しかし巨大プロジェクトの雰囲気がどんなもので影響がどれほどあり、どこまで大きなニュースになるか、本作を見ればその重要性はかなり感じることができるだろう。ある意味企業の宣伝ともとれなくもない部分が多く、実際よりも2,3割は良く書かれていることだろう。特に”挑戦”の部分では時期尚早と言われたシステムもあり、今考えると手放しでは喜べないプロジェクトという印象はある。

何が強烈にインパクトがあるかというと、そのシステム開発に対する金額の大きさと、かかわる人数の多さだ。さすがに本になるだけあってどのプロジェクトもそれなりに大きい。そして困難に陥る原因も大体同じようなことだ。本作だけ読むと、プロジェクトの失敗要因は全て外部的なことに集約されているような気がする。要件が纏まらない。この一言で終わってしまう。実際にはそのほかに多種多様な原因があるのだが、それは書くことができないのだろう。一番無難な原因を皆アピールする。

僕自身はこれほど大きなプロジェクトは経験したことがないが、大小にかかわらず失敗原因は似たようなものだろう。雰囲気を感じるには良い作品だ。



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