2007.9.2 愛煙映画ではない 【サンキュー・スモーキング】
評価:3
■ヒトコト感想
本作はタバコ会社に媚を売るような作品かと思ったが大違いだった。中身はどちらかといえば、タバコ会社には不利になる内容かもしれない。タバコ研究アカデミーのPRマンであるニックのなんともいえない巧みな屁理屈。ぱっと見は詐欺師のような雰囲気だが、その印象は、本作を見ていくうちに様変わりしていく。子供に対して議論の大切さを教え、どこか憎めない笑顔をふりまく。このニックの存在が本作のすべてだろう。おそらく世間一般の風潮は、タバコには風当たりが強い。それをニックの話術と雰囲気で、作中の観衆と同じように、丸め込まれてしまう。社会派作品風だが、小難しくないのもよい。
■ストーリー
タバコ研究アカデミーのPRマンをするニック・ネイラーは、厳しさを増すタバコへの攻撃をかわすため連日マスコミの矢面に立って戦い続ける業界の顔。中でも、パッケージにドクロマークを、と息巻くフィニスター上院議員は目下最大の懸案事項。そんなある日、ニックは映画を使ってタバコのイメージアップを図る“スモーキング・ハリウッド作戦”の指揮を任される。一人息子のジョーイを連れ、ロサンジェルスへと渡ったニックは、さっそくハリウッドの大物エージェントと面会、タバコPRのための映画の企画を話し合う……。
■感想
ニックもすばらしいキャラクターだが、その子供がよい。親の仕事の明暗をしっかりと目に焼き付けながらも、自分の父親を尊敬する姿。この子供の存在があったからこそ、ニックに対する高感度もあがっている。タバコPRのためには、屁理屈を駆使して、相手を丸め込む。相対する上院議員が、言っていることは正しいのだが、雰囲気が悪役なので、対するニックがこの時点で正義の味方のようになっている。ひょうひょうとした表情もニックに好感をもつ原因なのかもしれない。
僕自身、タバコは吸わない。周りでもあまり吸ってほしくない。しかし、ニックの話を聞いていると、そこまでタバコに嫌悪感を抱く必要はないのではないかと思えてくるから不思議だ。本作の中でもニックは未成年のタバコの害は認めているし、全体的にも健康を損なう恐れがあることも多少認めているようだが、巧みな話術で、相手にそれを悟らせない。結局本作の中ではニックに話術に勝てるものは存在しなかった。
印象に残ったのは、アメリカ独特というか、なんでもかんでもタバコで死んだという流れにしているところだ。酒も同様。その二つに比べると銃はずいぶんと可愛く見えるというような流れがあったのだが、これは意外だった。タバコと酒と銃。これが三大悪のように語られているのも本作独特なことなのだろうか。
結局は、紆余曲折がありながら、ニックは話術に生きることになる。企業人として明暗を全て表にだし、子供にもさらけ出しながらも、これほどニックに好感がもてるのはなぜだろうか。あの独特な笑顔と、少し無用心で、わりとなんでも前向きに考える性格がそう思わせるのだろうか。決してタバコに対して好感をもつこともなければ、嫌悪感をもつこともない。ただ、見終わった感想としては、満足感でいっぱいになった。
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