2007.7.22 個性的な絵柄は必見 【鉄コン筋クリート】
評価:3
■ヒトコト感想
松本大洋の原作は未読だ。ストーリーがどうかは別として、絵の雰囲気はそのままだ。複雑で書き込まれてはいるが、どこかアナログな雰囲気がする全体像。声優も特に悪くもなく、すんなりと物語に入り込むことができた。激しい動きのあるシーンや、アニメでしかできないような、ありえない構図からの画面など、日本のアニメらしいすばらしい出来だと思う。ただ、ストーリー的にまとまってはいるのだが、面白味がなかった。なんだか一昔前のエヴァンゲリオンのように、内面描写に力を入れているのが気になった。
■ストーリー
宝町で暮らす親を知らない少年クロとシロ。町で“ネコ”と呼ばれるふたりは、かつあげやかっぱらいで暮らしていた。その町で“子供の城”の建設話が持ち上がる。しかし、それは古めかしい宝町を近代化して支配しようとするヤクザの仕業。昔気質のヤクザのネズミは反対するが、彼のボスは謎の男“蛇”にこの計画を一任していた。残酷な蛇はクロとシロを邪魔者だと判断し、刺客をおくる。ケンカでは誰にも負けない凶暴なクロだったが、刺客の前では手も足も出ない。そして追いつめられたシロは刺されてしまう…。
■感想
描きこまれた絵、独特の雰囲気がある登場人物たち。ぱっと見てインパクトがあり、一目で何か普通とは違うというのは認識できるだろう。この個性はありきたりな作品の中では輝いていると思う。しかし、その輝きは原作者である松本大洋の絵の力で、作品本来とはまた違った意味を持っている。このインパクトのある絵にくらべると、作品全体としてはずいぶんこじんまりとした作品になっているなぁという印象が強かった。
個性はあるが、魅力があるかというと疑問がつきない主人公のクロとシロ。この独特な絵では好き嫌いが別れるだろう。そんな中でもヤクザのネズミは一人、いい味をだしていた。このネズミが登場当初は、何かとてつもない力をもっていそうな雰囲気をだし、クロも警戒していたはずが、いつの間にかしょぼくれた親父になってしまっている。ネズミという伏線があっさりと裏切られ、新たに巨大な敵が登場する。悪くはないが、ネズミをもう少し活躍させてほしかった。ネズミの最後はとてもよかったと思うが。
結局、クロとシロはなんだったのか。クロの内面描写でごまかされ、オチも曖昧にされたような気がした。自分の内面と語るという手口は、すでにエヴァでやりつくされている感があるので、新鮮さはない。何かいわくつきな雰囲気をごまかそうとして、最後に自分の内面と語るということで、何もかも解決させてしまうのは卑怯な気もした。原作を読んでいないのでなんとも言えないが、原作もこの結末だったのだろうか。
絵も動きも声優も個性があり悪くない。その個性に比べるとストーリーがなんだか物足りないような気がした。
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