定年ゴジラ 重松清


2007.7.10 サラリーマンの宿命? 【定年ゴジラ】

                     
■ヒトコト感想
定年。サラリーマンなら多くの人が経験するであろう儀式。本作は定年後の生活を描いた作品なのだが、ただの生活ではなくニュータウンというところがポイントなのだろう。ニュータウンという響きには独特なものがある。そしてそこに生活する定年族。朝の散歩を日課としたり、デパートの物産展に足しげく通ったり、第二の人生の幸せとはいったい何なのか。未来の自分の姿を想像させるような、そんな心にズキズキくる描写が多かった。普通のサラリーマンなら多くの人がなにかを感じるだろう。

■ストーリー

開発から30年、年老いたニュータウンで迎えた定年。途方に暮れる山崎さんに散歩仲間ができた。「ジャージーは禁物ですぞ。腰を痛めます。腹も出ます」先輩の町内会長、単身赴任で浦島太郎状態のノムさん、新天地に旅立つフーさん。自分の居場所を捜す四人組の日々の哀歓を温かく描く連作

■感想
定年後の生活を具体的にイメージできる人は少ないだろう。今を生きるのに精一杯、仕事を辞めたらのんびり好きなことをよろうと考えるが、いざその時になると何をしていいのかわからず、暇をもてあます。なんとなくその状況も想像できる。本作に登場する定年ゴジラたちは、ほぼ一般的な定年族なのだろう。暇をもてあまし、朝の散歩を日課にする。そして、ある人はぬれ落ち葉となり奥さんに付きまとう。なんだか自分の未来を真剣に考えてしまった

自分よりも、まず直近では父親のことを考えてしまった。ちょうど父親も来年には定年を迎える。その際にいったいどういった生活をするのか。本作の定年ゴジラたちのように、朝の散歩を日課にするのだろうか。自分よりもまず身近な父親の動向が気になるのは確かだが、確実なのは本作の定年ゴジラたちとそうかけ離れた生活をするとは思えない。

定年後にも何かしらの問題はある。しかし根本にあるのは、仕事を辞めたあとの膨大な時間をいったい何に費やすかということだろう。連作小説となっている本作。それぞれに小さいことから大きいことまで問題が登場するのだが、根本にあるのは定年したという事実に起因しているように思えた。仕事を辞めて初めて家族に目がいったというのもあるのだろう。

定年したからといって何も問題なく、のんびりすごせるとは限らない。その時期にはその時期なりの問題が生まれてくるのだ。避けては通れない定年という時期をどのように過ごすか。本作はちょっとした道しるべになるのかもしれない。




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