τになるまで待って 森博嗣


2006.7.8 作品単体としては成立していない 【τになるまで待って】

                     
■ヒトコト感想
このシリーズは全てを通して読まないときちんと評価されないのかもしれない。本作単体では作品として成り立たないような気もしてくる。事件は起きるのだが、結局その動機や背景、また真賀田四季との関係など一切明らかにならない。あるのはちょっと不思議な事件を犀川があっさりとそのトリックを見破るというだけだ。そしてそのトリックも特別新しかったりはしない。そして唯一とても気になったラジオドラマに対して、もまったく語られることがない。これで1つの作品として納得して読めるのだろうか・・・。

■ストーリー

森林の中に佇立する“伽羅離館”。“超能力者”神居静哉の別荘であるこの洋館を、7名の人物が訪れた。雷鳴、閉ざされた扉、つながらない電話、晩餐の後に起きる密室殺人。被害者が殺される直前に聴いていたラジオドラマは『τになるまで待って』

■感想
いつものGシリーズのメンバーが怪しい洋館でバイトに励む。お決まりのパターンで何か不思議な事件が起こりそのトリックを解決する。そしてその事件には深い理由や動機があり、その根底には真賀田四季の陰がちらついているという流れを予想していた。

怪しい洋館の主である謎の超能力者、そして人を異界へと導くような謎の能力。中盤までは確かにどのようなトリックなのかと興味津々で読み進めることができたのだが、途中からなんてことはないトリックだとわかり、そしてそれと共に不自然な事件も実は大したことがないという結果になってしまった。相変わらず犀川と海月は冴えているようだがそれだけで本作の魅力とするにはインパクトが足りないと思った。

シリーズを通してしつこいくらいに真賀田四季に関係がありそうな雰囲気があるのだが、今回はさわりだけで深い繋がりがあるようには思えない。前作と比べると事件も平凡であり、何か裏でとてつもないことが起こっていそうな雰囲気すらない。ただ淡々と人里離れた洋館で風変わりな事件が起こり、それを偶然居合わせたメンバーが体験したというだけのように思えた。

これだけで、どこまで楽しめるかわからない。森作品ファンでももしかしたら辛いかもしれない。ある意味、森博嗣ファンの
踏み絵的作品なのかもしれない。



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