たったひとつの冴えたやりかた


2006.4.2 言葉の響きが良い 【たったひとつの冴えたやりかた】

                     
■ヒトコト感想
タイトルがすばらしい。一話目に登場するコーディーの口癖なのだが、冴えたやりかたというのが言葉の響きからしてすばらしいとはまた違う、何か一瞬の閃きから思いついたことのように感じた。シンプルで無駄なものがいっさいないやり方。実際にコーディーは頻繁に口ずさんでいるのだが、冴えたやりかたが悲しい結末を物語っていても、その前向きな言動から悲壮感はそれほど感じなかった。それが余計に悲しく感じることもあるのだが・・・。その他二つの話もSF好きにはたまらない作品なのだろう。最初の取っ掛かりで躓くとその後、物語に入り込むことはできない。専門用語などを毛嫌いする人には向かないかもしれない。

■ストーリー

やった!これでようやく宇宙に行ける!16歳の誕生日に両親からプレゼントされた小型スペースクーペを改造し、連邦基地のチェックもすり抜けて、そばかす娘コーティーはあこがれの星空へ飛びたった。だが冷凍睡眠から覚めた彼女を、意外な驚きが待っていた。頭の中に、イーアというエイリアンが住みついてしまったのだ!ふたりは意気投合して〈失われた植民地〉探険にのりだすが、この脳寄生体には恐ろしい秘密があった…。

■感想
最初に難解な専門用語が多数登場し、そこをうまく乗り越えることができなければ、本作の舞台である宇宙での出来事を理解することができない。SFなのですべてを理解する必要はないが雰囲気を重視するためには難しい専門用語の内容をそれなりに理解しておく必要がある。

本作はタイトルにもなっている「たったひとつの冴えたやりかた」につきるかもしれない。他の二作もそれなりに面白いのだがどうしても平凡に感じてしまうのと、キャラクターの映像が頭の中に浮かべることができなかった。それに比べると「たたひとつ~」は登場キャラクターが少ないというのもあるのだが、コーディーのキャラクターが分かりやすく頭の中に住みついたエイリアンとのやりとりも非常に面白い。

エイリアンが原子レベルで取り付いて、宿主の体と思考に対して様々な影響を与えることができる。そんな気持ち悪い状態にもかかわらず、コーディーの前向きな姿勢に好感を持てた。その姿形や存在、ましてや性別もわからないエイリアンに対してコーディーが勝手に性格づけをし、性別まで決めてしまう。エイリアンとコーディーの、親子とは違い、親友とも違う運命共同体としての二人の行動を読んでいると、随所に冴えたやりかたに挑戦しているのが分かる。

結末は悲しいのだが、読み終わって涙を流したり、暗い気持ちになるようなものではない。悲しさの中にも夢や希望にあふれており、宇宙という広大な広場に自由に放たれたコーディーとエイリアン。そんな気がしてならなかった。二人は最後には満足してたったひとつの冴えたやりかたを実行したのだろうと。



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