小生物語 乙一


2007.10.4 乙一の赤裸々な日常? 【小生物語】

                     
■ヒトコト感想
乙一作品にはなぜか惹かれてしまう。過激な内容の割りに丁寧な文章で読者をひきつけてはなさない。本作は日記風創作だが、その丁寧な文章を読んでいるうちに、この乙一という作家が非常に人間的に優れていて、魅力的な人物のような錯覚を覚えた。作中で、ファンレターの中に携帯番号が書かれているとあるが、そう思う気持ちもあながちわからなくもない。嘘と誠が巧妙に織り交ぜられた本作。作家という仕事の断片と、趣味の部分、そして突拍子もない展開。創作とわかっていながら、思わずニヤリとせずにはいられない面白い言い回しが多数登場する。

■ストーリー

驚天動地、奇々怪々、前代未聞、無我夢中、陰翳礼讃、波瀾万丈…。小生と乙一の161日。

■感想
エッセイとも違うWEB上にアップした日記をそのまま書籍化したような作品。日記といっても乙一の日常を赤裸々に語っているわけではなく、創作を含めた面白日記となっている。あの過激な小説を書いた作家のイメージとはかけ離れた生活。嘘かホントか、半引きこもりのような生活をしながら創作活動に勤しんでいるようだ。日記という体裁上、その日に起こった出来事をつづっているようだが、すべてが真実というわけではない。

読んで明らかに嘘とわかるような描写もあれば、微妙な部分もある。どこまでがホントでどこからが嘘なのか。曖昧ながら、このなんともいえないゆっくりとした雰囲気を楽しむことができる。小説家というのがどんな仕事をしているのかが、事細かにわかるわけではない。ただ、想像以上にマンガ喫茶に入り浸り、ファミレスのドリンクバーへ通っているという印象をもった。

一人称を小生とすることで、いかにも乙一ではない別人の物語のように思わせている。ただ、作家という仕事の辛さのようなものがなんとなくだが、感じることができた。普通のサラリーマンでは考えられないような生活だが、その分プレッシャーも相当なものなのだろう。乙一と小生。どちらもユーモア交えて、面白おかしく生活している日記となってはいるが、リアルな部分もほんの少し感じることができた。

ただの日記として読むと、恐らく混乱するだろう。しかし、創作として読むと、頭の中には小生という人物像がしっかりと出来上がるような気がした。



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