数奇にして模型 森博嗣


2005.11.6 マニアックな仕上がりだ 【数奇にして模型】

                     
■ヒトコト感想
物語の舞台が模型展示会という一般人には馴染みのないものであり、
登場人物も一癖、二癖ある人物ばかりでかなりマニアックな仕上がりになっている。
マニアックだからといって、まったく一般人を寄せ付けないわけではなく、
適度に分かりやすい解説が添えられているのでなんとなくだが理解はできる。
しかし、相変わらず森作品には天才や普通の人とはどこか違った精神の持ち主が多数登場する。
今回もそれらの人物達がいて始めて成立する物語だと思った。
あまりに超越しすぎるとなんでもありな感じがして少しずるさも感じた。

■ストーリー
模型交換会会場の公会堂でモデル女性の死体が発見された。
死体の首は切断されており、発見された部屋は密室状態。
同じ密室内で昏倒していた大学院生・寺林高司に嫌疑がかけられたが、
彼は同じ頃にM工業大で起こった女子大学院生密室殺人の容疑者でもあった。
複雑に絡まった謎に犀川・西之園師弟が挑む。

■感想
首が切断されるという陰惨な事件の意味合いを考えることから始まっている。
確かに一般人が殺人を犯す上で首を切るというのは何かしら意味があってすることなのだろうし、
それを予測するのは事件を解決する上では必要なことかもしれない。
しかしそれはあくまで相手が一般人の場合であって、
森作品に多数でてくる天才やそれに準ずる人達には当てはまらないと
思った。結末は予想どおり、一般人ではおよそ考えつかないような理由で首を切るという行為を行っている。
予想はついていたがちょっと残念だった。
できれば、一般人にも理解できるような理由がほしかった。

犀川、萌絵に加えて今回は過去の作品に登場した喜田に加えて大御坊という異色のキャラが登場している。
これがかなり濃いキャラで喜田の存在感はかなり薄れている。
今後登場することがあるかどうか分からないが、主要キャラクターが出るたびに、読者としては
まさかこいつが犯人ってのはないだろうなぁーという余計な勘ぐりを入れてしまう。

模型という物に対しての知識はなくとも本作は十分に楽しめる。
ミステリー的なトリックは別段すごいということはないのだが、
濃いキャラクター達がお互いに独自の考えをもっており事件を解決に導く為に推理するが、
天才的な芸術家が登場して場を混乱させたりと読者も誰が犯人かわからなくなり
迷走することだろう。

異常なキャラクターが出てくるたびに、犯人だと思ってしまう
今回はちょっとそれを逆手にとって、まっとうだと思わせといて実は影では
異常な精神を持つ人物だという流れにまんまと騙されてしまった。
この手の事件ではどうしても犯人は異常じゃないと成立しないのだろう。



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