ステイ


2006.8.22 自分の想像を超える人物への恐怖 【ステイ】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
夢か幻か今起こっていることが現実なのかそんな感覚がなくなる不思議な作品だ。最初の印象としては精神科医が自分の患者に取り込まれ、だんだんおかしくなっていくような流れかと思っていたがそうではなかった。人間の精神が不安定になるとどうなるのか、もしかしたら本作のサムのようになるのかもしれない。自分が精神科医だけに異常にいち早く気づくサム。しっかりと内容を把握していないと作品の雰囲気に飲まれてしまう可能性がある。ナオミ・ワッツが出ているということで、なんとなくマルホランド・ドライブにも雰囲気が似ているような気がした。

■ストーリー

精神科医のサム・フォスターは、謎に満ちた若い男性患者ヘンリー・レサムを担当する。ヘンリーは死にとらわれており、自分は3日後に自殺すると予告した。そして、サムにはもうひとり気がかりな相手がいる。画家であり、同棲中のガールフレンドのライラだ。彼女はサムの元患者でかつて自殺未遂をおこしており、彼女の不安定な精神状態はサムの精神的負荷でもあった。サムは彼女を愛しており、結婚指輪も買っているにもかかわらず、ずっと渡せないままだ。ヘンリーはその指輪に異常な興味を示す。そんなライラもまた、自殺願望のあるヘンリーに深い関心を持つ。ある日、ヘンリーが忽然と姿を消した。不安を隠せないサムは、必死にヘンリーを探し回るのだが……。

■感想
自分の想像を超えることをやる人間には脅威を覚える。それが良い方向だったり尊敬の念だったりすればよいが、悪い方向に向かうとまさに手の着けようがない。精神科医のサムが患者であるヘンリーの心を読み取ることができずに混乱する様は、えたいの知れないものに対する恐怖と同じ物のような印象を受けた。自分に脅威を与えるものからは避けたいと思うのが人間の心理だが、サムのようにそれが仕事であればどうしても関わらないわけにはいかない。ヘンリーの予言を聞くたびにその秘密を解き明かしたいと思うが心の奥底には恐怖がある、そんな感じがした。

不思議な雰囲気を持ったヘンリー。彼がこの作品を摩訶不思議なものにしている。見た目はどこにでもいそうな白人青年なのだが、その普通さが逆に不安を掻き立てる。普通の青年でありながらどこか生気のない顔つきと、芸術的才能。普通ではない部分も持ち合わせているが、それが特別変なことのように感じてきてしまう。雰囲気作りでこうも演じる者の印象を操作できることに驚いた。

結局オチを見ると、なんだー、というような感想を持つかもしれない。確かにちょっと安易な方法かもしれないが、それでもそこに至るまでの不安な雰囲気は十分に楽しめる。単純に精神科医のサムが患者であるヘンリーに毒されていくというパターンを想像していたので、それもありではないかと思った。

えたいの知れない、想像を超える行動をしてくる人物に対しては人は不安を覚えてしまう。それを実感した作品だ。



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