そして二人だけになった 


2005.11.23 濃いミステリー 【そして二人だけになった】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
海峡大橋内部の巨大なコンクリート塊に閉じこめられ、閉鎖的な空間で次々と連続殺人が起きる。
これってありがちな山荘物となんらかわりはない。
ちょっとハイテクを駆使しているので目新しいが基本は昔からよくあるパターンだ。
しかし本作は閉鎖空間だけでなくそれ以外に
ミステリーのエッセンスがたっぷりと詰まっている

盲目の科学者や双子の入れ替わり、被害者が手に持つ謎の球、ロンドン橋の歌など盛りだくさんだ。
これでもかと詰めこまれた情報を旨く読者が理解しなければ、途端に分けの分からない作品になってしまう。
特に結末間近では何が正しくて、現実はどうなのか分からなくなってしまう。
じっくりと考えながら読むとその深さが分かる作品だ。

■ストーリー
全長4000メートルの海峡大橋を支える巨大なコンクリート塊。
その内部に造られた「バルブ」と呼ばれる閉鎖空間に科学者、医師、建築家など6名が集まった。
プログラムの異常により、海水に囲まれて完全な密室と化した「バルブ」内で、次々と起こる殺人。
残された盲目の天才科学者と彼のアシスタントの運命は…。
反転する世界、衝撃の結末。知的企みに満ちた森ワールド、ここに顕現。

■感想
タイトルからしてなんとなく内容が想像できる。某有名な作品と似たような雰囲気を醸し出し、
もしかしたら最終的に二人で殺し合うとあいう安易な展開になるのではないかと
別の意味でハラハラしながら読み進めた。
さすがに使い古されたパターンは使わないようで、一筋縄ではいかないストーリーになっている。

密室での殺人事件は良くあるパターンではあるのだが、そこに盲目の科学者や入れ替わる双子などという
様々な要素が絡み、なにかありそうな印象を冒頭から与えられる。
その予想通り結末に近づくにつれて、トリックは確かに明らかにはなってくるのだが、その目的や
果ては登場人物が話している言葉のどれを信用して良いのか分からなくなってしまう。

結末は二転三転し、結局はどうなのかというのが集中して読まないと曖昧なまま終わってしまう場合がある。
この長編の大部分を盲目の科学者とそのアシスタントの目線で読み続けていく中で、
突如としてある種の大どんでん返しが待っているとは想像もつかなかった。
これをどう思うかはその人の感性の問題かもしれないが、
ある意味夢オチとも言えなくもない印象を持ってしまった

オチの部分はもしかしたら賛否両論かもしれないが、
だからといって結末が消化不良になるというわけではない。
人によっては冗長とも思えるエピローグがあるのだが、
それがあることによってこの物語に真の決着をつけることができていると思う。

このエピローグが無ければ、確かに読者それぞれに自由な結末を想像することができるかもしれないが、
僕的にはその方式はあまり好きではないので、無駄かもしれないが最後のエピローグは絶対に必要だと思う。



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