2007.9.24 まったく他人事ではない 【それでもボクはやってない】
評価:3
■ヒトコト感想
正直、毎朝満員電車を使って通勤しているサラリーマンにとって、本作は恐ろしくて仕方がない。まさに他人事ではない。いつ自分に降りかかってもおかしくない出来事であり、その解決策はまったく見い出されていない。本作の主人公である徹平は、まだフリーターという身分であるのでまだマシだが、これが普通のサラリーマンであったらと思うと、ぞっとしてしまう。痴漢冤罪というよりも、何より日本の裁判制度に対して警告をしているような本作。陪審員制度の是非が問われる中、この作品の意義はかなり大きなものになりそうな、それほどインパクトのある作品だ。
■ストーリー
大事な就職の面接を控えた日の朝、大勢の通勤客に混じって満員電車から駅のホームへ吐き出されたところを痴漢に間違われ現行犯逮捕されてしまった金子徹平。連行された警察署で容疑を否認すると、そのまま拘留される。その後も一貫して無実を主張するものの、結局は起訴される事に。徹平の無実を信じる母や友人・達雄の依頼でベテランの荒川、新米の須藤の二人の弁護士が徹平の弁護を引き受け、いよいよ裁判が始まる…。
■感想
本作を見て驚いたことが二つある。一つは痴漢をしても、認めて示談すれば誰にも知られずにすぐ釈放されるということ。そして、もう一つは裁判で争ったとしてもほぼ勝てる可能性がなく、下手すると禁固刑になってしまうかもしれないということだ。現代っ子的で、危機感がないように感じられる主人公の徹平。この徹平はまさに現代人のステレオタイプとして描かれているのだろう。誰もが直面するかもしれない状況であり、一つの出来事でその人の人生を大きく変えるほど影響のある出来事だ。
痴漢冤罪に対して親身になる弁護士たち。いつのまにか裁判官と検事と被害者が悪者であり、弁護士と徹平が善人であるという図式ができあがっている。物語として、徹平は絶対にやっていないと思うからこそ、そう思うのであるが、客観的に見るとどちらが善悪というのはない。冤罪を生み出す裁判官が悪いのか、先入観まるだしの取調べが悪いのか、有罪にしようと躍起になる検事が悪いのか。なんだかわけがわからなくなってしまった。
流れ的に言うと、最後には無罪が証明され、ハッピーエンドになるのが正しいのかもしれない。しかし、あの結末を迎えると、現実の重みをずっしりと感じることになる。いくら虚構といえども、自分の身に降りかかる危険性のあることが、こんな結末を迎えている。正直恐ろしくなってしまった。ほんの些細な誤解から、誰でもこの徹平のようになりかねない。そして、その結末は徹平と同じような道を歩むのだろうか。
まさに現在の日本の裁判制度を皮肉るような、的確な描き方をしている。最後にご都合主義的に終わらないのもよかった。しかし、リアルすぎて恐ろしくなるのは確かだ。
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