2007.5.21 旅のフィナーレは… 【深夜特急6】
評価:3
■ヒトコト感想
長い旅も本作で終了となる。アジアの雑踏にまみれ、値段交渉をし、生き馬の目を抜くような生活を繰り広げた初期のころと比べると、明らかにそのテンションは下がっている。イタリアからスペイン、そしてポルトガル、フランス。有名な観光地を回り、今までの旅で感じたような泥臭さを感じることができなかった。もちろんそれは、その土地のせいもあるかもしれない。しかし、旅に対する情熱というよりも、旅が終わりに近づくにつれて、それに恐怖する描写しか出てこないことが気になった。
■ストーリー
イタリアからスペインへ回った〈私〉は、ポルトガルの果ての岬・サグレスで、ようやく「旅の終り」の汐どきを掴まえた。そしてパリで数週間を過ごしたあと、ロンドンに向かい、日本への電報を打ちに中央郵便局へと出かけたが―。Being
on the road―ひとつの旅の終りは、新しい旅の始まりなのかもしれない。旅を愛するすべての人々に贈る、旅のバイブル全6巻、ここに完結。
■感想
旅の結末に何を求めているのか。旅の終わりを恐怖するように、しきりに終わりに対する不必要なまでの拒否感が描かれている。いったいこの旅の目的はなんだったのだろうか。もともと目的のない旅で、ただゴールだけが決められた旅だったはずだ。それがいつの間にかゴールすること、すなわち日本に帰り、真っ当な生活に戻ることに恐怖するような印象ばかりが残っている。
そうは言っても、有名な観光地だけに観光する場所は多数登場する。本作も例外なく、それらの場所を回っている。そしてただの観光地紹介のようにありきたりに観光地が語られている。別に特別なハプニングを求めるわけではないが、今までの深夜特急の流れからすると、あまりに普通すぎて物足りなさばかりが残ってしまった。
ゴールに対する感動のフィナーレというのはもちろんない。旅に対する万感の思いと日本に帰る不安。そして恐らく作者自身も苦労したであろう魅力的な旅の表現方法。なんだか今までのアジアの旅に比べると魅力は半減しているのは明らかだ。
1巻~6巻まで全てを通して感じたことは、旅に対する憧れはもちろんのこと。旅にでたあと、帰ることが実はものすごく難しいのではないかということ。その難しさを回避するには、日本に帰ってきたときに、確固たる目的がなければならないのだろう。
旅に出るには日本の生活が充実していなければならないと強く感じた。
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