脚本通りにはいかない


 2008.6.2  ワンランク上の映画の見方 【脚本通りにはいかない】  

                     
■ヒトコト感想
映画好きにとって脚本というのはどれほど重要なのだろうか。映画を見て、脚本を意識することはないし、意識すべきではないと思う。しかし、本作のように脚本から映画の仕組みを読み解くことによって、より深く作品を理解できるような気がする。人気脚本家がちょっと古い作品を脚本家の目線から語る。どれもわりと好意的に書かれており、そうなると当然、紹介された作品を見たくなる。かなり面白そうだという思いは強まるのだが、実際に見るとなると難しい。なぜならかなり古い作品であり、DVD化されていない作品もあるからだ。単純な映画批評ではなく、脚本から作品を見る。それは自分が今までしてこなかった新しい見方かもしれない。

■ストーリー

「踊る大捜査線」「TEAM」「さよなら、小津先生」などの人気脚本家君塚良一が、完成品の映画から脚本上の狙いや真意を読み解き、脚本家の創作の苦悩や喜びをも浮き彫りにする、映画雑誌『キネマ旬報』の人気連載を単行本化!脚本執筆の極意を明かした講義採録も特別収録。映画ファンの読み物として、脚本家志望者のバイブルとして、幅広く楽しめる一冊。

■感想
脚本家は職業柄当然、普通の人とは違った視点で映画を見ている。もちろん純粋に映画を楽しむというのは当然のことだが、脚本家がどのように苦労しているか、どれだけ直しが入ったかなどが事細かに語られている。実際に上映されるレベルになると、かなりの直しが入るのが当然らしい。まず、これに驚いた。映画というのはまず脚本家が作るのではなく、監督、プロデューサーたちと共同で、ドンドン直されていくのが当然らしい。だとすると、脚本家の価値というのはどこにあるのだろうか、初期のプロットだけなのだろうか。そんな疑問にも答えてくれる。

作者が分析した作品は誰もが知っている有名な作品もあれば、今の映画ファンはあまり知らないような古い作品もある。古い作品を今、批評するのだが当然それだけ思いいれも強い。昔の記憶が美化されているというのもあるのだろうが、それにしてもやけに面白そうに思えてくる。残念なことに、そんな非常に興味深い作品たちは三十年も前の作品のため、気軽に見るというわけにはいかない。現在の人気脚本家がべた褒めする作品というのには、かなり興味を引かれるが古い作品というのが少し残念だった。どうせなら、最新作も批評してほしかった。

一部では脚本家のバイブルといわれている本作。確かに、脚本家を目指す人にとってはかなり勉強になるのだろう。構成を考えるのは監督やプロデューサーでもできる。脚本家しかできない、その人の感性に頼るしかないのは、セリフ回しだというのはかなり共感できた。セリフ一つでその作品の質が大きく変わるというのは過去に感じたことがある。もちろん構成が優れているといのが前提なのだろうが。

本作を読んでから、より映画に対しての見方がワンランクアップしたような気がする。しかし、気をつけたいのは、脚本が云々というテクニックばかりを批評する感想にはならないようにしたい。



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