2006.1.17 天才も思春期には悩むのか 【四季 夏】
■ヒトコト感想
成長した四季が両親を殺害するまでの経緯が丁寧に描かれている。Vシリーズでおなじみの面々が登場し、懐かしく感じ前回の春と比べると幾分読みやすくなっている。それはまるで四季が幼少時代と比べ社会性を持ち、周囲と関係性をもつようになってきたことにリンクするように。四季が起こす事件はシリーズを読んでいる者にとっては周知の事実であるので、特に目新しいものはないがそこに行き着くまでの天才の思考と悩みが垣間見えるようで飽きることなく読み進めることができた。
■ストーリー
米国から帰国した真賀田四季(まがたしき)は13歳。すでに、人類の中で最も神に近い、真の天才として世に知られていた。叔父、新藤清二と行った閉園間近の遊園地で、四季は何者かに誘拐される。瀬在丸紅子(せざいまるべにこ)との再会。妃真加(ひまか)島の研究所で何が起こったのか?
■感想
相変わらずS&MシリーズとVシリーズを読んでいることが前提となってはいるのだが、前回よりはかなり分かりやすく理解もしやすい。それだけ間口は広いのだが、ミステリーを求めて本作を読んだ人にとっては期待はずれのものとなってしまうだろう。四季シリーズ自体が四季の伝記のようになっているのかもしれない。
真賀田四季という天才も思春期を迎えるとそれなりに変化があるらしい。そんなことを思わせる構成になっており思春期独特の悩みを天才ゆえの苦悩というか一般人とはまた違ったアプローチの仕方で苦悩している。前作ではまったく人間らしいところは感じなかったのだが、今回はとても人間らしく一人の女性としても大人と子供の中間である少女の危うさがとても出ていると思った。
全体を通して考えると本作にサブタイトルをつけるとしたら四季の恋とでもつけたらいいのかメインはそこなのだろう。しかしそれよりも一番驚かされたのはまだ確信は持てないが林警部が苗字を犀川と名乗っていたので、もしかしたらそれはS&Mシリーズの犀川なのだろうか?一箇所だけ出てきた場面を珍しく見逃さなかった。決定的な事実は書かれていないので予想の範囲なのだが、今後のシリーズで明らかになるだろう。
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