世界の中心で愛を叫んだけもの


2007.8.20 セカチュウの元ネタ? 【世界の中心で愛を叫んだけもの】

                     
■ヒトコト感想
セカチュウがタイトルを孫パクリ(パクリのパクリ)したという作品。中身はこてこてのSFで、この手の作品に慣れていない人には正直辛いかもしれない。年代的なものもあり、新しさを感じることはない。しかし、普遍的なSFの魅力というものは存分に感じることができる。もちろん、印象に残る作品もあれば、ほとんど意味がわからない作品もある。翻訳モノ独特の言い回しも気になる部分ではある。古典的名作としてSF好きならば外せない作品なのだろうが、SF好きのみにお勧め。それ以外には敷居が高いだろう。

■ストーリー

SF短編集。「ぼくが読者に期待するのは、いつもよりほんのすこし大きな協力と精神集中なのだ」という作者の前書きがあるように、読者に期待されるレベルは高い。「世界の中心で愛を叫んだけもの」、「101号線の決闘」、「不死鳥」、「眠れ、安らかに」、「サンタ・クロース対スパイダー」、「鈍いナイフで」、「ピトル・ポーウェブ課」、「名前のない土地」、「雪よりも白く」、「星ぼしへの脱出」、「聞いていますか?」、「満員御礼」、「殺戮すべき多くの世界」、「ガラスの小鬼が砕けるように」、「少年と犬」の全15作。

■感想
表題でもある「世界の中心で愛を叫んだけもの」と「サンタ・クロース対スパイダー」と「星ぼしへの脱出」そして、「少年と犬」は強烈に印象に残っている。わかりやすさで言えば、群を抜いているような気がした。その他の短編は読んでいて、いったい何が言いたいのか、何を目的にしているのかよくわからない部分があった。当然、好き嫌いはあるのだろうが、読んでいて、自分の集中力がこれほど変化するのも珍しいと思った。

本作の数々の短編の中でも「少年と犬」は最後の作品というのもあって、強烈に印象に残っている。SFとしての作法がどうとかよりも、その雰囲気と頭の中に思い浮かべるイメージがとても明確で、はっきりと色つきで想像できた。犬とパートナーを組むという部分と、アウトローな主人公。なんだか、普通に映画としても成り立つようなそんな
完成度の高さを感じてしまった。

翻訳独特の言い回しが気になる部分ではある。そして、たまに登場するしつこい文体。読んでいて、ふと、思い出したのは村上春樹の文体だ。意味があるのだろうが、わかりにくい遠まわしな表現は非常に近いと感じた。これを心地よいと感じるか、不快に感じるかで、本作の評価は大きく変わってくるだろう。僕はどちらかといえば、わかりやすさを求める方なので、あまり好みではない。

SFの名作。そしてエヴァンゲリオンやベストセラー本からパクられたとあって、それなりの知名度がある。実際に最後まで楽しんで読むのには、ある程度訓練されていないと辛いかもしれない。



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