世紀末の詩


2007.12.15 愛とはいったいナンなのか 【世紀末の詩】

                     
■ヒトコト感想
哲学的なセリフと、小難しい薀蓄。ドラマ放映時は、視聴率はそれほど良くなかったはずだ。周りの評判も良くはなかった、しかし、なぜか無性に惹かれていた。ビデオに撮って何回も見た。そんなはまりまくったドラマの原作を十年たった今、読んでみたのだが、思っていたよりも感動もなにもなかった。印象的なセリフはあり、驚くような演出や、仕組みもある。ただ、作品全体として読んだ場合は、評価は低くなるだろう。愛とはいったい何なのか、それぞれのエピソードで愛が語られているが、ハッピーエンドでないのは、さすが野島伸司だ。懐古的気分で読んでみた。

■ストーリー

贈賄工作をして臨んだ学長選挙に落選した百瀬夏夫は、突如心の中に洪水のようにあふれ出た笑いに逆らわず、ビルから飛び降りようとした。その時、向かいのビルにいた男に笑いかけられ…。日本テレビ系ドラマのノベライズ。

■感想
ドラマでは一話完結形式で11話の作品となっている。それを小説化したのだが、これだったら単純に脚本を読ませてもらったほうが良かったかもしれない。なんだかうまく小説として成り立っていないような、そんな印象を持った。そんな中でも、作中で登場人物たちが話すセリフにはインパクトのあるセリフが多かった。映像で見て、聴覚として聞くよりも、視覚として文字を追うほうが印象に残る。今、読んでもドキリとするような言葉がいくつかあった。

いくつかある中で、最もすばらしく、印象に残っているのは「パンドラの箱」と「車椅子の恋」だ。どちらも愛について語っているのはもちろんのこと、その
圧倒的なバッドエンディングと心の奥底に残る物悲しさ。設定に無理があったり、ありえないと笑い飛ばすことは簡単だが、物語から発信されるメッセージ性はとても強いと思う。愛とは信じること、愛とは疑わないこと。言葉にするのは簡単だが、なかなか実践はできない。本作を読みながら、ドラマを見た当時の衝撃的な気分を思い出してしまった。

一般的になかなか理解しがたい愛への思いがあるのだろうか。哲学的であり、シニカルな方向へと導くあたりは、一般受けはしないだろう。感動的別れがおとづれるはずのラストであっても、あえて、惨めな死に方を選択している。人間ドラマとしてではなく、愛についてとことん語りたかったのだろう。登場人物たちの動きは、すべて愛を語る上での演出にしかすぎない。ラストに登場する愛についての詩がすべてを物語っている。

ドラマの雰囲気は出ていると思うが、本作を楽しむには、やはりドラマを見ておくべきだろう。



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