最後の家族 


2006.8.3 自立した家族の姿 【最後の家族】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
引きこもりに対するイメージはただの怠け者というイメージしかなかった。しかし本作を読んでから一番辛いのは引きこもっている本人で次にその家族が辛いのだと分かった。息子の引きこもりと父親のリストラなどをきっかけとして崩壊していく家庭。ある意味確かに崩壊してはいるのだが、もしかしたらこれがこの家族の有るべき姿なのかもしれない。引きこもりに対する慰め方や元気付け方は正直まったく誤解していた。本作に書かれていることが真実なら実に目からうろこだ。引きこもりを立ち直らせるにはまずその周りが自律しなければならない。当たり前だが忘れている部分でもある。

■ストーリー

リストラにおびえる父親・秀吉、若い大工と密会を重ねる母親・昭子、引きこもりの長男・秀樹、10歳年上の元引きこもりの男と交際する長女・知美。ある日、向かいの家で男に髪をつかまれて引きずられる女を目にした秀樹は、それが「ドメスティック・バイオレンス(DV)」だと知り、いつしか女を救うことを夢想しはじめるが…。

■感想
一昔前の家庭内暴力や仮面夫婦などとはまた違う、現在の社会のゆがみの影響で生じた問題かもしれない。おそらくもう5,6年したらあらたな家族の問題が出てくるだろう。一つが解決してもまた新たな問題が浮上してくる。それが家族であり、人間なのだろうか。

引きこもりの息子を持つ家族のあり方。そして父親のリストラ。客観的に見ると引きこもりということさえ外から見えていなければ絵に描いたような幸せな中流家庭だったのだろう。変なプライドに拘る父親にどこか他人まかせな娘。若い男と不倫する母親など家族の内側はボロボロだ。本作を読むと、そのまま父親のリストラがなくとも遅かれ早かれ、もっと酷いことになっていただろう。それを息子の引きこもりによって
他人の痛みを知ることができ、一人ひとりが真の意味で自立することができる。そのことによって最後は家族がバラバラになるが、それは一番マシな結末なのかもしれない。

父親のリストラ問題で現在の生活レベルを維持しようとすると無理が生じるので、短絡的な解決方法として自殺を選ぼうとする。なぜそうなるかというと単純にプライドの問題なのだろう。人間は持ち家がなくとも生きていける。そしてこの日本で餓死するということはほとんどないのだ。それは分かっていながら、中流階級のプライドが許さない。最終的にふっきれた父親には好感がもてた。どんなことをしてでも生きていける。ふっきれたときの家族の行動には、明るい未来が見えるような気がした。

本作はドラマになったはずだが、チャンスがあれば見てみたいと思う。



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