流星ワゴン 重松清


2006.6.7 男ならばホロリとくるのは確実? 【流星ワゴン】

                     
■ヒトコト感想
同じ年の父親。本作と同じように自分の立場だったらどうだろうか。ふと、そんなことを想像してしまった。男ならばある程度感情移入できると思う。決してご都合主義ではなく、ファンタジーに溢れてはいるが予定調和的でないこともそこだけ変に現実的だ。過去に対する後悔というのは誰にでもあることで、それを安易に変えることができないという現実と変えたいと思う心。決してハッピーエンドではないが希望が持てる終わり方のような気がした。

■ストーリー

38歳、秋。ある日、僕と同い歳の父親に出逢った。僕らは、友達になれるだろうか?死んじゃってもいいかなあ、もう……。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして自分と同い歳の父親に出逢った。時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか?

■感想
男ならばある程度本作に共感できる部分があるだろう。昔ながらのステレオタイプな頑固親父。そんな頑固親父が自分と同じ年であればそれほど恐ろしくもなく、頑固でもないことがわかった。これはある意味男ならば誰でもが感じる、自分の父親を超えた瞬間に近いものがあるのかもしれない。父親がこんなに小さかったと気づくとき、自分が生まれた時の父親と同じ年になった時。父親から見るといつまでも子供は子供なのだろうが、子供にとってもいつになっても父親は父親なのだ。

本作には女性がほとんど登場しない。男の親子関係がメインなのだが、いじらしく感じるのは親達ではなく親に心配をかけまいとする小さな子供達だ。親の心子知らずとはよく言うが、子の心親知らずというのも良くあるパターンだ。親子関係は簡単に表現できるものではなく、それぞれいろいろとあるのだろう。しかし理想的な親子関係を夢見た親子はこんな感じになるのかもなーと思ってしまった。

過去の過ちを取り戻すことができればどんなにいいか。それは誰でも考えることで、本作のようにファンタジーに溢れる作品の場合は最後に、未来が変わりハッピーエンドというのが定番なのだろう。しかし、あえて過去を変えることができず、ただ過去の出来事を眺めるだけ。変えられないと分かっていれば、それは非常に辛く苦しいことなのにそれを経験することで、勇気や希望がわいてくる。過去は変えられないが、未来は変えられる。そんなメッセージがこめられているようだった。

最終的には幸せな終わり方ではないが、僕の中では希望に満ち溢れた未来がまっているような気がした。




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