リリィシュシュのすべて


2007.9.21 この陰鬱な感じは何なんだ 【リリィシュシュのすべて】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
見終わったあとに残る気持ちの悪さや、鬱感は相当なものがある。虚構として見ているはずなのに、まるですぐ近くで起きていることのように思わせるほどのリアル感。頭の中では分かっているはずだが、目から入る情報が直接心に響くように、この陰鬱な雰囲気から抜け出すことができない。救いようのない結末と、誰もが気分が沈むようなラスト。本作をリアルな中学生が見たらどう思うのだろうか。優れた構成のために、ひと時も目を離すことができないのが災いして、悪いほうに影響がでそうな気がする。かなり精神的には落ちる作品だ。

■ストーリー

ある地方都市、中学2年生の雄一(市原隼人)は、かつての親友だった星野(忍成修吾)やその仲間たちからイジメを受けるようになる。そんな彼の唯一の救いはカリスマ的女性シンガー、リリイ・シュシュの歌だけであり、そのファンサイトを運営する彼は、いつしかネット上でひとりの人物と心を通わしていくが…。

■感想
いじめや援交。別に今となっては珍しいことでもなければ、衝撃的なことでもない。ただ、その過程をつぶさに見せられると、どうしても他人事のように思えない。普通ならば、どんなに感情移入しても、どこか客観的に見ることができるのだが、最初から最後までことこまかに描かれ、自分がまるで中学生に戻ったような感覚にさせるのはこの作品のすばらしい部分なのだろう。二時間を越える作品なのだが、まったくダレルことなく最後まで目を離すことができなかった。

家庭用ビデオカメラで撮ったような映像がたまに入り込む。それも友達と楽しく沖縄旅行をするシーンや、レイプシーンに多用されている。この無機質でざらついた感じがリアル感を際立たせ、人の心の残忍性を浮き彫りにしているような映像となっている。ショッキングなシーンがあるのだが、それに対して何もできない雄一に対しては、何の感情もわいてこない。すべてがなるべくしてなる。それほど強制的な力というものを作品自身から感じてしまった。

いじめの発生原因や、なぜターゲットに選ばれたかなどは詳しく語られていない。それは現実にも詳しく語れないほど曖昧な原因だからだろう。理不尽な原因でのイジメ。そして、逃げ場のない閉塞感。美しい映像と反比例するようにどんどんと物語は暗くなっていく。決して助けを求めることはないのだが、親や教師たちとまったく交わらない世界観。最後までカタルシスを得ることなく終わってしまう。

見終わったあとには
確実に鬱な気分になる




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