臨死


 2008.5.12  様々な要素を含んでいる 【臨死】  

                     

評価:3

■ヒトコト感想
ニックが臨死状態に陥るまでは非常に興味深かった。成績優秀で人気者のニックだが、誕生日パーティでの行動から、どことなく周りに対して懐疑的な目を向けているような雰囲気が漂っていた。成績優秀な優等生にはありがちなパターンかと思っていたが、不良のアニーとの絡みから一気に物語は急転直下していく。臨死という状態をうまく使い、他人の行動をすべて見ることができるが、自分からは何もできない。ある意味、物語を読む読者的立場に立たされたニック。臨死という状態と共に、それぞれの親子関係にもスポットが当てられている。本作に登場する高校生たちは、大小あるにせよ、何かと親との確執がある。最後はハッピーエンドではないが、なんだか全てが救われたような気がした。

■ストーリー

成績優秀、人気者の高校生ニックは、友人の窮地を救ったために、不良グループリーダーの少女アニーに目をつけられる。ある日、警察が強盗事件の容疑者としてアニーのもとを訪れ、学校は騒然とする。警察にアニーのことを告げ口した人物と勘違いされたニックは、パーティの晩、アニーの逆恨みのために不良グループの暴行を受け、森に置き去りにされる。瀕死の重傷を負ったニックが目覚めるといつもと何か様子が違っていた。母親が自分の写真を見て泣いている。友人に助けを求めて話かけても彼の前を素通りする・・・。

■感想
ミステリー的な要素もあり、オカルト的な要素もある。そして、青春物語的な要素を付け加えながら、親子関係のヒューマンドラマでもある。見る人の見方によっては、どうとでも変わりかねない作品なのだろう。片田舎の高校生が海外に憧れ、クラスメイトとの問題や親との問題もありながら普通に生活するはずだったのだが…。臨死状態に陥ってから、物語のトーンは一変する。容疑者であるアニーがあっさりと警察の捜索から逃げおおせたり、ありえないほど荒れた生徒とニックのような生徒が同じクラスだったり、気になる部分は多少あるが、臨死のインパクトで全てを消し去ってしまっている。

ニックを捜査する捜査官が良い味をだしている。アニーのことを親身になって心配し、ニックの居場所を驚異的な推理力で推測する。臨死状態のニックが自分の行方を探す人々を客観的に見る場面ではなんだか、ものすごく物悲しく感じてしまった。自分はここにいるのに気づいてもらえない。そして、自分の命の火がゆっくりと消えていくのを感じながら、どうすることもできない。ヒステリックに暴れ回るニックの気持ちは痛いほど良くわかる。しかし、現実には一切その影響を与えないという空しさも漂っていた。

ニックの表情がどうにも小生意気に見えるのが良かったのだろう。頭が良く、成績優秀で、非の打ち所の無い男。ただ、どこか人を見下しているようにも見えるその表情。小憎らしいまでの態度が、優等生であり、どこか不良たちに決定的に嫌われる要素を含んでいるというのが良くわかる。アニーに標的にされるのも無理はないと最初は思った。しかし、それが結末間近になると、ニックの表情と共に、性格までも大らかになり、マイノリティを受け入れる寛大な心のようなものを感じることができた。それはつまり、ニックの成長の証なのかもしれない。

臨死というと、ある程度内容は想像できるだろう。ただ、登場人物たちの人間ドラマはかなり深いものがあるように感じた。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp