リチャードニクソン暗殺を企てた男


2006.1.11 平凡な男の変貌 【リチャードニクソン暗殺を企てた男】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
平凡な男がテロを企てそれを実行するまでを描いた作品。平凡な男という描写がこれでもかと似合うショーン・ペンの演技。どこにでもいる普通の男で仕事や家庭の悩みなど、誰もがもっているとても普通のことだ。今の状況を打開するために未来のかすかな希望にすがる。この気持ちはとてもよくわかり、誰もがもっていることだろう。現在が辛い状況ならばなおさらだ。しかしその希望も打ち砕かれたときに人はどのような行動にでるのか。人間の心の弱さと、追い詰められた男の狂気に恐ろしいものを感じた。

■ストーリー

1974年2月、ひとりの男がワシントンのバルチモア空港に降り立った。ある強い決意を胸に秘めて。それは、民間機をハイジャックし、ホワイトハウスめがけ墜落すること・・・。 サム・ビック(ショーン・ペン)は平凡なセールスマン。一度崩壊した自分の家庭を再生するため、懸命に仕事に打ち込むが思うように業績は上げられない。ボスから与えられた自己啓発のテープの声と、連日テレビの画面に映し出されるウォーターゲート事件のニュースが、まるでウイルスのように彼の肉体に侵入し、その精神を蝕んでゆく。

■感想
本作を見ると、誰でもサム・ビックになりうると思った。全てがうまくいかず、神経を蝕まれていく中で1つの希望にすがる。そういったものにすがらなければ、生きていけなかったのだろう。そこまで、追い詰められる前に普通の人間ならば、逃げ出すか、全てを投げ出してしまうだろう。それができないマジメな人物なだけに、全てが悪い方向にいってしまう。

1つの希望に全てをかけた時に、その希望が破られたときの心境は誰にでも心あたりはあるだろう。しかし、サム・ビックのように他の全てがまったくうまくいかず、全て人生をかけている状態の心境は想像を絶するものなのか、一人の平凡な男を、大統領暗殺という無謀なことへ挑戦させるほど、強烈なものなのだろう。

恐ろしいと思ったのは、誰でもこのような心境になることがあり、そこで実際に行動を起こすまでにはいたらず全てがどうでもよくなることはあるが、そこは理性で抑えることができるのが普通だ。しかし、いったん理性の殻を破ると、とんでもなく的外れな逆恨みを持ち、平凡な男を狂気に走らせる

冷静になれば、普通ではありえないことなのだ。昨今の日本での異常な事件など考えられないことが起きるが多かれ少なかれ、本作のサム・ビックの心境に近い状態だったのだろうか。自分の駄目な人生は全てこの社会システムに原因がある。自分は嘘をつかない正直者だから悪くない。典型的な駄目人間だが、誰でもそうなりうるから恐ろしい。



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