2006.6.11 微妙なショートショート 【レタス・フライ】
評価:3
■ヒトコト感想
ショートショートでは満足のいくミステリーを描くのが難しいのはよくわかる。ショートショートはどれも無難な作品でどこか不思議な感じはするのだがあまり印象には残らない。その他の短編も懐かしいシリーズの面々から最新のGシリーズの主要人物までも登場してくる。どれもビックリしたり唸らされるようなミステリーではない。そのキャラクターの知られざる裏側に焦点を当てたような作品だ。キャラクターにある程度思い入れがある人ならば読んでも損はないと思うが、それ以外の人が楽しんで読むには苦しいかもしれない。
■ストーリー
西之園萌絵が叔母らと訪れた白刀島の診療所をめぐる怪しい噂に迫る。(「刀之津診療所の怪」)長期の海外出張で訪れた某国の美術館で、“僕”が遭遇した不可思議な事件とは…?(「ラジオの似合う夜」)ショート・ショート五編を含む
■感想
”ラジオの似会う夜”では珍しく一人称で書かれており、森作品を読みなれているものならばすぐにこの人物が誰かということはわかる。しかしそれを理解できなければこの作品の面白さが半分も理解できないだろう。今までのシリーズを理解したうえでそのキャラクターの性格を把握していなければ深い意味を理解するのは難しいだろう。
ショートショートはすべてミステリーとはいえず、今までの森作品にはない雰囲気だ。不思議な殺人者の話や煙突の話などすでに先入観としてミステリーかもしれないという思いがあったので、身構えていると突然終わってしまうので「えっ?これで終わり?」という感想を持ってしまう。今までの森作品であればそこに至る経過が細かく説明があったり大どんでん返しがあったりするのだが、ショートショートなのでその余裕はないようだ。
”刀之津診療所の怪”はこれからのGシリーズのキャラクターを登場させてはいるのだが、やはり目立つのは萌絵だったりS&Mシリーズの面々だったりと相変わらず短編でも新たなシリーズのキャラクターが目立つことがない。インパクト的にもどこか沢山の謎をてんこ盛りにし、それでごまかしているような雰囲気もある。最後はシリーズを読んでいないと理解できないような終わり方なのは相変わらずだ。
ショートショート以外はシリーズを読んでいることが必須だ。
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