Carver's dozen-レイモンド・カーヴァー傑作選 


2008.3.2 ブラックな村上春樹か 【Caver's dozen-レイモンド・カーヴァー傑作選】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
レイモンド・カーヴァーという作家のことはまったく知らなかった。ただ、村上春樹が大きく影響を受けたのだなというのはわかった。訳者だからだろうか、文体が似通っており、結論をはっきりと明確にしないのもそのままだ。いくつかの短編が収録されている本作。それらすべてを、実は村上春樹が書いていましたといってもまったくわからないだろう。作者独自の人生観のようなものがでている部分もあるが、かなり雰囲気は近い。アル中であったり、家族の問題であったり、村上春樹にはないブラックな部分も多少見えてくるが、一番は死ぬ間際に書かれた作品かもしれない。自分の経験からなのか、ものすごく真に迫る迫力のようなものを感じてしまった。

■ストーリー

村上春樹が心をこめて贈る、12の「パーソナル・ベスト」。レイモンド・カーヴァーの全作品の中から、偏愛する短篇、詩、エッセイを新たに訳し直した「村上版ベスト・セレクション」に、各作品解説、カーヴァー研究家による序文・年譜を付す。

■感想
何かしら自分の人生経験が作品に投影されているのだろう。だとすると、すべてが順風満帆な人生ではなかったことは年表などを見ると容易に想像できる。最後までいったい何がいいたかったのか良くわからない作品もある。それぞれの作品には訳者のちょっとした解説のようなものもあるが、そこで語られているようなことを感じることはできなかった。正直言えば、すごく面白い作品だとは思わない。しかし、なぜかちょっとだけ癖になりそうな雰囲気はある。読み続ければ、じわじわと面白さがわいてくるのかもしれない。

訳者の文体が表面にでるのは当然のことだろう。そして、訳者の作品との区別がつかないのもしょうがないのかもしれない。ある意味、村上春樹が翻訳していなければ、絶対に目にすることのなかった作品たちだろう。それを読んでみて、特別な感銘は受けないまでも、自分の心の中にはレイモンド・カーヴァーという小説家がいて、壮絶な人生をおくりながら、自分の死を見つめたような作品を書いていたということはしっかりと覚えているだろう。

訳者もそうだが、この作者もエッセイがとても魅力的だ。事実をありのままに多少の脚色を加えながら語られるエッセイは読んでいてとても心地よい。小説のように奇想天外なことが起きるわけではないが、等身大の作者を一番感じることができるのはやはり、エッセイなのだろう。日常を感じながら、ゆっくりとした雰囲気の中で読むエッセイは格別なものがある。

本作以外にも、作者の作品はあるのだろう、それを積極的に読むかどうかはわからないが、恐らく村上春樹が訳したものはそれなりに読むのだろう。



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