プリズンホテル4 春 


 2008.5.27  最終巻にふさわしく? 【プリズンホテル4 春】  

                     

評価:3

■ヒトコト感想
このシリーズもついに最終巻。巻を重ねるごとにヤクザが経営するという雰囲気は薄れてはきているが、その巻ごとに何か大きなテーマのようなものを感じた。本作では、最終巻にふさわしく?今まで決して良くは描かれなかった主人公である木戸孝之介をメインとして扱っている。著名な文学賞を受賞するか否か、そして、育ての母との関係。ただのDV男だったはずが、たいした説明もなしに、それらがすべてなかったことにされている。毎回、複数の登場人物たちそれぞれにプリズンホテルで暴れさせ、何かしらの結論をもとめているのだが、いつにも増して、本作は統一感がないように感じられた。懲役五十二年の老博徒は、何か関係していたのだろうか。

■ストーリー

義母の富江は心の底から喜んだ。孝之介が文壇最高の権威「日本文芸大賞」の候補になったというのだ。これでもう思い残すことはない…。忽然と姿を消した富江。その行方を気に病みながらも、孝之介たちは選考結果を待つべく「プリズンホテル」へ。果たして結果はいかに?懲役五十二年の老博徒や演劇母娘など、珍客揃いの温泉宿で、またしても巻き起こる大騒動。笑って泣ける感動の大団円。

■感想
老博徒や演劇母娘。そしてDV小説家の育ての親など、相変わらずプリズンホテルを舞台にして、様々な登場人物たちが暴れまわる。多数の登場人物たちを迷走させることなく、しっかりと個々の役割を果たしているのは素晴らしいと思う。ただ、この”春”という巻のメインとしては、いったい何が言いたかったのか。流れ的には木戸孝之介の文学賞受賞がメインなのだろうが、それにまったく絡まず、平行線を進むように行動する人物もいる。前作から感じていたことだが、登場人物たちのバラバラ感は本作でさらに極まっている。

本来なら、すべての集大成というべき本作。確かにDV小説家は文学賞をとり、救われたのかもしれない。母親と和解し、育ての母の大切さに気づき、愛人たちを敬う。今までとは180度違う人物に成り代わった小説家。ただ、改心した理由はまったく不明だ。ある日突然全てが変わる、そして、この小説家が改心するということで、全てを丸くおさめようとしている。なんだか、広げすぎた風呂敷をたたむことは最初から考えていないようなつくりだ。

魅力的なキャラクターは多数登場する。懲役五十二年という異常な老博徒であっても、その存在理由や、なぜそこまで博打が強いのかはまったく説明されない。演劇母娘であっても、隠し子関連の話はまったく忘却のかなたへと飛び去ってしまっている。それぞれが目的をもって登場したはずなのに、すべてを忘れ、木戸孝之介の文学賞受賞を祝い、そして、終わりを迎える。気にしなければ気にならないのかもしれない。ただ、プリズンホテルという一つの舞台で起こる出来事なので、何かしら関連があるのかと思っていた。

このシリーズ全てに言えることだが、つながりを楽しむというタイプの作品ではない。ただ、個々のキャラクターが好きなように動いている、そんな作品だ。



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