王の男


2007.1.9 笑えないが迫力ある芝居 【王の男】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
いつの時代も権力者が全てを握っている。死ぬも生きるも王しだい。気に入られれば夢のような生活、疎まれれば死がまっている。王に翻弄される重臣たちとその原因となってしまった芸人たち。歴史的背景を知っていればより楽しめたことだろう。単純に芸人たちが演じる芝居を見ても楽しいとは思わない。しかしそれが醸し出ている迫力というものは感じることができた。王が芸人たちに演じさせ、それを見て王は感情を爆発させる。理不尽だが、その気持ちは良くわかる。派手な化粧と派手な衣装。一見こっけいに見えるが、芝居自体は歌舞伎にも似た迫力がある。どこまでが真実でどこからがフィクションか判らないが、芝居の迫力は紛れもない事実で、それに影響されて王が重臣たちに手をかけるのもありえることかもしれないと思えてきた。

■ストーリー

16世紀初頭、漢陽にやってきた旅芸人チャンセンと相棒の女形コンギル。都で時の王ヨンサングンが、妓生上がりの官女と日夜遊び呆けている噂を聞きつけた2人は、芸人仲間と宮廷を皮肉った芝居を始める。興行は人気を博すものの、一座は侮辱罪で逮捕されてしまう。重臣に「王を笑わせることができれば、侮辱ではない」と反論したチャンセンたちは、死をかけて王の前で芸を披露する。彼らの芸は王を魅了することができるのか…。

■感想
正直芸人たちの芝居は笑えない。何が面白いのか判らない。これは日本人だからではなく時代の問題なのだろうか。しかし笑えないとしても奇妙な面をつけて演技する芸人たちを見るとその演技に引き込まれてしまうのは事実だ。人を魅了するような演技。これは笑えなくとも、なにかしら相手に影響を与えるのだろう。そしてその結果、王は感情を爆発させ暴政に走り最後は没落していく。芸人たちの芝居はきっかけにしかすぎないが、それはとても大きなきっかけのような気がしてならない。

女よりも美しいコンギル。確かに美しいかもしれないが、ノーマルな男が美しいとはいえ男に引かれるだろうか。ここだけがかなり違和感を感じてしまった。芸人としての力量を認めて王が宮廷内に住まわせたのはわかるが、その後の展開は少し納得できない部分もある。王に気に入られ、芝居を続ける芸人たちも目の前で人が死んでいく事実を目の当たりにし王に対しての恐怖というものを感じなかったのだろうか。王という絶対的なものに囲われているという安心感はあるにせよ、いつ自分達も重臣たちと同じような目に合うか、その気持ちはまさに針のむしろ状態かもしれない。

本作は芸人たちが主役のような流れだが、実際には王が全てなのだろう。重臣たちに意見され、官女に翻弄され、芸人たちに影響される。全て王自身がまいた種であり、自業自得の極みかもしれない。王の哀れさと対比するように芸人たちのすばらしさが浮き彫りになっている。特にチャンセンの一貫した芸人魂。王の情けなさと比べるとその顔つきから雰囲気までよっぽど王にふさわしいのではないかと思えてくるほどだ。

王の暴政ぶりはどこの国でも変わらないのでイメージしやすいだろう。国の繁栄と王の衰退。どこまでがフィクションなのかわからないが、歴史的事実をまったく知らないものが観ても十分楽しめる作品だ。



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