幼な子われらに生まれ 重松清


2007.4.4 結婚生活に尻込み 【幼な子われらに生まれ】

                     
■ヒトコト感想
独身者にとって家族とは未知のものである。自分の子供でさえ未知のものであるのに、それが他人の連れ子だったら。正直、結婚願望がない者が本作を読むと確実に気持ちはより離れていくだろう。感じるのは家族の難しさと子供の扱いづらさ。下手に成長してくると、生意気な口も利きはじめるだろうし、女の子であればマセタことも言い始めるかもしれない。本作の私と同様に、もし自分が同じ立場であったらと常に考えさせられる。そしてそれは僕にとっては気持ちの良いものではなかった。テーマがテーマだけに少し辛かった。

■ストーリー

三十七歳の私は、二度目の妻とその連れ子の二人の娘とありふれた家庭を築く努力をしていた。しかし、妻の妊娠を契機に長女は露悪的な態度をとるようになり、『ほんとうのパパ』に会いたいと言う。私も、長女を前妻との娘と比べてしまい、今の家族に息苦しさを覚え、妻に子供を堕ろせと言ってしまう―。

■感想
結婚しなければ、周りから疎外感を感じるのは一昔前。今は多様化したライフスタイルが示しているように、結婚しなくてもなんてことはない。しかしいずれはと考えている人を尻込みさせるものがある。多少境遇が特殊とはいえ、考えさせられる部分は少なくない。妻が夫に対して何でも頼り、まるで雌蜘蛛のようにがんじがらめにして相手を逃がさない。それが分かった瞬間、どんな愛も覚めてしまうような気がした。そして、その表現が本作に出てきたときには鳥肌がたった。

子供に関しても、無条件に子供好きな人ならば良い。特にそうでない人も自分の子供であれば可愛くなるとよく言われている。しかし本当のところどうなのだろうか。皆、良い父親を演じようとしているのではないだろうか。本作が的確にそのあたりをついてきているので、今現在、リアルに家族をもつお父さんが読んだらどんな感想を持つのだろうか。

本作の環境が特殊というのはあるが、これほどリアルに親子関係を描いた作品を読んだことがない。リアルな子供の反応。そしてそれに対してどうしてよいのか分からない父親の反応。誰もが容易に想像できるが、その解決策は実は誰もわからない。本作も結局は何の解決方法を見出してはいない。ただ流されるように父親という役を続けていくだけだ。

結婚に対してあまり積極的ではない人は、よりその気持ちが強くなるだろう。




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