おれは非情勤 東野圭吾


2005.7.3 子供向けと侮るな 【おれは非情勤】

                     
■ヒトコト感想
5年の学習やらに連載されていた子供向けの作品。
しかし、子供向けだからといって侮れない。トリックはそれなりに
分かりやすくなっているが、それ以外の部分ではいつもの東野節が炸裂している。
さらに主人公がクールな非常勤講師というのがよい。
東野圭吾は、どこか冷めたクールな人物を書かせるととても魅力的なキャラクターを
生み出せる人だと思った。

■ストーリー
ミステリ作家をめざす「おれ」は、小学校の非常勤講師。下町の学校に赴任して2日目、
体育館で女性教諭の死体が発見された。
傍らには謎のダイイングメッセージが!一方、受け持ちのクラスにはいじめの気配がある…。
盗難、自殺、脅迫、はては毒殺未遂(!?)まで、行く先々の学校で起こる怪事件。

■感想
非情勤という名前のとおり、ホントに非情だ。しかしそれがよい。
子供相手の連載だからというわけではないのだろうが、ところどころに
子供を冷たく引き離すような描写もある。
この物語に出てくる人物と読者は恐らく同年代になるのだろうが
それでもまったく媚びることなく、進んでいる。
ここまで書くと影響を受ける小学生はいないのかと少し心配になるほどだ。

子供向けだからといって侮ってはいけない。大人も十分読むにあたいする作品だ。
複雑な伏線やトリック、入り組んだ人間関係などはないが、逆にそれらに
頼らず、文章だけで簡潔に面白く読ませようとしているので
ものすごくスッキリと読むことができ、読後感もよい。
子供向けだからなのか、それほど残酷な描写も出てこず、
今までの東野作品ではわりと最後にハッピーエンドになる作品がすくなかったが、
本作はほぼ全てハッピーエンドだ。

ミステリー作品としても王道的なトリックをいくつか使用し、
本作をミステリー作品として始めて触れるであろう小学生にとっては非常に
入り込みやすい作品かもしれない。

本作を読むことで小説を好きになる小学生が増えるであろうし、
普段小説を読み慣れない大人が読んでも、良い入門書的なものになるだろう。


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