ノーマンズランド


2004.12.28 違った意味でリアル 【ノー・マンズ・ランド】

                     

評価:3

戦争映画っていうと大規模で金をかけてリアルな
ものを思い浮かべるかもしれないが、本作は
恐らくかなりの低予算で、箱庭的というか
下手したら舞台でもできるような規模である。
だからといって、つまらないわけではなく、
映画としてのクオリティーはとても高いと思う。

ボスニア紛争中、ボスニア軍とセルビア軍の
陣地に挟まれた無人地帯がある。そこに迷い込んだボスニア兵士と
偵察に来たセルビア兵士、そこには負傷し体の下に
地雷を置かれ、身動きが取れないボスニア兵士がいた。
その三者の中に国連軍、ジャーナリストなどが加わり
それぞれの思惑とは違う方向に物語りが動いていく。

ボスニア紛争がテーマで割と重いが、実際には
笑いがある。声を出して笑う感じではなく、残酷な場所の
はずなのに、ふとしたコミカルな行動。
それがすごく面白い。
作品全体にそうしたコミカルな雰囲気が溢れている。
無人地帯で顔を合わせた兵士達の心の葛藤、
お互いの言い分があり、どちらが悪いわけでもない。
中立である国連軍が事なかれ主義になるのも分かるし
スクープをねらうジャーナリストの気持ちもわかる。

ある意味、人間が次々打たれ死んでいくリアルな戦争映画
ではないが、戦争が行われる環境、それを見守るその他の
勢力がいるというところなど、非常にリアルに感じた。

今のイラク戦争でもそうだと思うが、とりわけ対岸の火の
ような気持ちでテレビを見ている日本人にとっては
近代兵器を駆使した戦争を思い浮かべがちだが、実際には
本作のように人と人とのぶつかり合いでの戦いも
多いのかもしれない。

本作を見ると戦争が非常に無意味な事のように思えてくる
誰一人、得をする人はいない。



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