ニッポンの単身赴任 重松清


2007.6.16 ホントに単身赴任は楽しいの? 【ニッポンの単身赴任】

                     
■ヒトコト感想
現在一人暮らし真っ只中の自分としては単身赴任の辛さというものがイマイチよく分からない。しかし、家族をもち、何十年も一緒に暮らした生活から突如として一人暮らしに変わったとすると、その衝撃は相当なものだろう。一般的なイメージからすると単身赴任は辛く寂しいものというイメージがある。本作はルポルタージュ形式で、実際に単身赴任をしている人にインタビューを試みている。どうなのだろうか。正直、単身赴任というモデルが周りになかったので実感はできないが、本作を読むとその辛さと共になんとかして楽しさを見つけ出そうと四苦八苦しているように感じてしまった。

■ストーリー

転勤族の息子だったシゲマツが、北海道から上海、南極まで、単身赴任の仲間20人をルポルタージュ。「単身赴任について考えることは、そのひとにとっての幸せのかたちを探ること」と言う著者が、彼らを訪ね歩いた結果、見えてきた「仕事」と「家族」と「自分」の新しい関係とは。

■感想
一人暮らしは自由気ままで何者にも縛られないすばらしい環境だと思っている。しかし、それは今の年齢で周りに友達もいるからそう思うのだろうか。これがもし五十代になり、誰も知り合いがいない土地へ単身赴任することになったら…。確かに寂しいのかもしれない。世間一般の単身赴任に対する負のイメージを払拭するように、本作に出てくる単身赴任経験者は楽しさとメリットを力説している。夫婦関係が良くなったとか、親子関係も良くなったとか。ちょっと強がりのようにも感じられたが、そうやって前向きな考えを持つこと自体が重要なのだろう。

本作は日本国内だけでなく、上海へ単身赴任している人々もクローズアップしている。日本とはまた違った問題がありそうな上海での単身赴任生活。実は僕自身、現実的に上海ではないが中国に転勤する可能性がある。物価が安いとか観光気分だとか、いろいろと耳障りのいい言葉をつないではいるが、やはり日本と海外では大きく異なるのだろう。まして単身赴任となればその違いは明白だ。上海での単身赴任のデメリットがほとんど本作には書かれていない。終始、これから単身赴任をする人に対して良いイメージを持たせようと躍起になっているように感じた。

いろいろなパターンの単身赴任があるが、全てが五十代だということも気になった。それよりも若ければ家族がついてくるのだろうか。今まで奥さんが全て周りの面倒を見てくれており、自分ひとりでは何もできないような年齢が五十代だ。そこでの単身赴任では、精神的な寂しさもさることながら実用的な面でも危惧されるべきことだ。全ての人が単身赴任に対して悲観的ではないというのは良く分かった。しかし、本音は皆単身赴任はしたくないという結論がでている。

これから単身赴任をする人がモデルケースとして読むにはうってつけかもしれない。読み終わればきっと単身赴任に対してポジティブになれるはずだ。




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