虹を操る少年 東野圭吾


2006.3.28 尻切れだが、それも良い 【虹を操る少年】

                     
■ヒトコト感想
天才的で超人的な人物なのだが、その才能を鼻に掛けず凡人と同じ生活をするがその才能の片鱗を少しづつ明らかにしていく。本作の光瑠のようにその天才的な頭脳で何もかもお見通しというようなキャラクターは嫌味になりがちだが、その謙虚な姿勢と言葉づかいに非常に好感がもてる。さらりと読め、続きが気になりなかなかやめることができない。結末がちょっと尻切れ気味だが、その後の展開はもう決まったも同然なのでそれもいいのだろう。ものすごくテンポのよい作品だ。

■ストーリー

「光にメロディがあるの?」「あるさ。みんな、そのことに気づいていないだけさ」。“光”を“演奏”することでメッセージを発信する天才高校生・光瑠(みつる)。彼の「光楽」に、感応し集う若者たち。しかし、その力の大きさを知った大人たちの魔の手が忍び寄る。

■感想
読み終わった後の余韻のようなものはそれほどないのだが、物語のスピード感とテンポのよさで読後感は非常によい。光を操作するというかなり奇抜なアイデアで物語を展開しているので、最初はミステリアスな雰囲気がただよっているのだがいったんそのからくりが分かると、あとは割とお決まりのパターンかもしれない。しかし、そのお決まりのパターンだと分かりきっていても、二時間ドラマを何故か見てしまうように続きが気になってページをめくる手を止めることができない。

「光楽」という新たな材料を用いて、それを利用した様々な現象や出来事を起こす。考えればいろいろと応用できると思うのだが、本作ではベーシックな使い方しかしていない。複雑にしようとすればするほどいろんなパターンに展開できると思うのだが、それをあえてせずに、終始シンプルに光楽を狙う敵と守る味方という図式を作り上げている。これが本作の読むスピードを上げている一因でもある。

敵の黒幕はいったいだれなのか、味方の黒幕はいったい誰なのか、このあたりを謎にした場合は最後にそれを暴露して読者を驚かせたりするのがセオリーだろう。しかし本作はあえてスピード感を損なうことをまったくせず、余計なものは省いてストーリーを進めている。最後もちょっと尻切れ気味だが、この後の展開はもはや語られなくとも用意に想像できるパターンだ。

テーマはものすごく壮大なのだが、こじんまりとうまくまとまっている良作だ。


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